セピア色のメモリー
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「ねえ、文月」
そう呼んでから、はっとする。
あぁ、親父の用事に着いていったんだっけ。
「拓斗様、何か御用でしょうか」
文月に代わって俺の世話を任された使用人が、ここぞとばかりに顔を出す。
ごめんね、御用ってほどもないんだよね。
拓「いや、何でもない。ちょっと出てくる」
そう言って立ち上がる。
「お一人でですか。私もお連れ下さい。何かあれば、秋江様に叱られてしまいます」
拓「一人になりたいの。察してよ、それくらい」
そういえば、使用人は不満げにそそくさと消えた。
拓斗はふらふらと部屋の外に出る。
ああは言ったものの、特に行きたいところもなく、見たいものもない。
とりあえず中庭でも眺めるか。
そう思って静かに歩く。
普段なら聞こえるはずの小鳥の鳴き声すら聞こえないのは、心が重いからだろうか。
そうこうしている間に、秋江の部屋の前に来た。
この廊下を過ぎれば中庭に出られる。
ふと朝の出来事が思い出され、拓斗は部屋の障子へと目を向けた。
人の影らしきものと、僅かな話し声。
母様が誰かを招いているのだろうか。
障子を閉め切っているということは、何か大事な話なのかもしれない。
盗み聞きするのは、あまり良くない。
拓斗は立ち去ろうと、視線をそらした。
しかし──
拓「え……?」
よく知った名前が聞こえたような気がして、拓斗は驚いた。
「……から、何者かが……それで……」
「結局……に……亜莉亜……」
亜莉亜。
母様が最も嫌がるはずの名が、なぜここで?
心拍数が上がるのを感じる。
拓斗は息を殺し、中の話を聞き取ろうとした。
しかし、聞き耳を立てる暇もなく、秋江の叫び声のような声が響き渡った。
「何をふざけたことを言っているの!私はあの小娘の首をここに持ってくるように言ったでしょう!?」
拓「……ッ!?」
拓斗の中で、断片的な情報がどんどん結びついてゆく。
十中八九亜莉亜のこと。
母様は亜莉亜を殺すことを命じたこと。
そして、母様が怒っているということは、何らかの邪魔があって、暗殺に失敗したということ。
そんなにも母様は亜莉亜のことが気に入らないのか。
つい今朝正直な気持ちを伝えたばかりだった、というのに。
炎が一気に燃え上がるごとく、体が熱くなる。
拓斗は障子に手をかけていた。
拓「母様!これは一体、どういうことですか」
拓斗と顔を合わせた秋江は、一瞬うろたえるような素振りを見せたが、すぐに厳しい目をして、口を開いた。
秋「拓斗。盗み聞きとは品のない。それもこれも全て、あの小娘の影響かしら?」
秋江は話をしていた黒装束の使用人に退出を促すと、拓斗に座るように言った。
拓斗は秋江から少し離れた場所に、しぶしぶ腰を下ろした。
秋「何度も言っているでしょう?貴方は由緒ある貴族の子。あのような薄汚い出身の溝鼠は、高貴な貴方にはとても釣り合わないのよ。だから、殺して首を持ってくるように言ったのよ。そうすれば、貴方も諦めがつくというものでしょう?全く、いい加減分かって欲しいものだわ。あんなのを殺すために、どれだけのお金を積んで、あの連中を雇ったと思ってるの」
何の悪びれもなくぺらぺらと語る秋江に、拓斗はただ呆然としていた。
拓「何で、そんなこと──俺はただ、亜莉亜と、一緒に」
そう呼んでから、はっとする。
あぁ、親父の用事に着いていったんだっけ。
「拓斗様、何か御用でしょうか」
文月に代わって俺の世話を任された使用人が、ここぞとばかりに顔を出す。
ごめんね、御用ってほどもないんだよね。
拓「いや、何でもない。ちょっと出てくる」
そう言って立ち上がる。
「お一人でですか。私もお連れ下さい。何かあれば、秋江様に叱られてしまいます」
拓「一人になりたいの。察してよ、それくらい」
そういえば、使用人は不満げにそそくさと消えた。
拓斗はふらふらと部屋の外に出る。
ああは言ったものの、特に行きたいところもなく、見たいものもない。
とりあえず中庭でも眺めるか。
そう思って静かに歩く。
普段なら聞こえるはずの小鳥の鳴き声すら聞こえないのは、心が重いからだろうか。
そうこうしている間に、秋江の部屋の前に来た。
この廊下を過ぎれば中庭に出られる。
ふと朝の出来事が思い出され、拓斗は部屋の障子へと目を向けた。
人の影らしきものと、僅かな話し声。
母様が誰かを招いているのだろうか。
障子を閉め切っているということは、何か大事な話なのかもしれない。
盗み聞きするのは、あまり良くない。
拓斗は立ち去ろうと、視線をそらした。
しかし──
拓「え……?」
よく知った名前が聞こえたような気がして、拓斗は驚いた。
「……から、何者かが……それで……」
「結局……に……亜莉亜……」
亜莉亜。
母様が最も嫌がるはずの名が、なぜここで?
心拍数が上がるのを感じる。
拓斗は息を殺し、中の話を聞き取ろうとした。
しかし、聞き耳を立てる暇もなく、秋江の叫び声のような声が響き渡った。
「何をふざけたことを言っているの!私はあの小娘の首をここに持ってくるように言ったでしょう!?」
拓「……ッ!?」
拓斗の中で、断片的な情報がどんどん結びついてゆく。
十中八九亜莉亜のこと。
母様は亜莉亜を殺すことを命じたこと。
そして、母様が怒っているということは、何らかの邪魔があって、暗殺に失敗したということ。
そんなにも母様は亜莉亜のことが気に入らないのか。
つい今朝正直な気持ちを伝えたばかりだった、というのに。
炎が一気に燃え上がるごとく、体が熱くなる。
拓斗は障子に手をかけていた。
拓「母様!これは一体、どういうことですか」
拓斗と顔を合わせた秋江は、一瞬うろたえるような素振りを見せたが、すぐに厳しい目をして、口を開いた。
秋「拓斗。盗み聞きとは品のない。それもこれも全て、あの小娘の影響かしら?」
秋江は話をしていた黒装束の使用人に退出を促すと、拓斗に座るように言った。
拓斗は秋江から少し離れた場所に、しぶしぶ腰を下ろした。
秋「何度も言っているでしょう?貴方は由緒ある貴族の子。あのような薄汚い出身の溝鼠は、高貴な貴方にはとても釣り合わないのよ。だから、殺して首を持ってくるように言ったのよ。そうすれば、貴方も諦めがつくというものでしょう?全く、いい加減分かって欲しいものだわ。あんなのを殺すために、どれだけのお金を積んで、あの連中を雇ったと思ってるの」
何の悪びれもなくぺらぺらと語る秋江に、拓斗はただ呆然としていた。
拓「何で、そんなこと──俺はただ、亜莉亜と、一緒に」