それに伴い、院生たちもぞろぞろと教室を出ていく。
亜莉亜は、このまま帰るか、鬼道演習場や武道館を見てから帰るか迷っていた。
せっかくだから、新しい環境で修行もしてみたいが、先程のこともある。
これ以上騒ぎを起こしたくはない。
──帰ろう。
そう決めた亜莉亜は、斬魄刀を手に、立ち上がる。
そのときだった。
「おぬしが噂の神影亜莉亜じゃな？」
色素の濃い肌の少女が亜莉亜に声をかけてきたのだ。
『そう、ですが？』
そうだけど。
そう言いかけた亜莉亜は、相手の身分を思いだし、はっとして言葉を書きかえた。
「わしは四楓院夜一じゃ。」
人懐っこくて太陽よりも眩しい笑顔で、少女は語る。
『──知っています。』
四楓院といえば、あの四大貴族の一つ。
話はよく聞く。
夜「そうか。なら、話は早いの。ほれ、喜助。」
夜一の後ろから、金髪の少年が顔を出す。
「……浦原喜助っス。」
何故か照れている喜助。
この二人が、私に何の用があるというのだろうか。
『私に、何か用がおありで？』
夜一に尋ねる。
夜「なんじゃ、そんなに警戒せんでもよかろう？わしらはただ、おぬしと仲良くしたいと思っておるだけじゃ。今日からわしらは友達なんじゃ。敬語はよせ。」
夜一の穏やかな笑み。
私と仲良く？
ありえない。嘘に決まってる。
私は知ってる。
仲良くしたいなんて言葉は頼りにならないこと。
今までもずっとそうだった。
結局は裏切るんでしょ？
分かってる。分かってるのに、何故？
何故二人の笑みに、安心感を覚えてしまうのだろう。
『嘘。私は、化けも……』
化け物。ただ恐ろしく力がある化け物。だから、仲良くしたい訳がない。放っておいて。
そう言おうとして、止められた。
喜「そんな悲しそうな顔、しないで下サイよ」
夜「そうじゃそうじゃ！せっかくの可愛い顔が台無しじゃぞ ？」
『！？』
は？
カワイイって何？誰が？
思いがけない言葉に、亜莉亜の目は丸くなった。
夜「なんじゃ。鳩が豆鉄砲食らったような顔をしおって。お主は、他のやつらと比べても、十分に可愛いぞ。のぉ喜助。」
意味深な目で喜助を見る夜一。
喜「勿論っスよ。」
夜「わしらはおぬしが嫌がることを言ったりはせん。」
夜一が亜莉亜を真っ直ぐに見つめる。
喜「安心してください」
微笑む喜助。
二人を見ていると、心の緊張がゆっくりと溶けていく気がする。
この二人なら信じても大丈夫、そんな気がした。
夜「亜莉亜、宜しくなっ！」
夜一に差し出された手を、亜莉亜は戸惑いながらも笑顔で握り返した。