セピア色のメモリー
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我妻邸に辿り着くと、俺が一歩足を踏み入れるか否かという所で母様が飛び出してきた。
相変わらず気の強そうな顔をしている。まるで鬼だ。
秋「拓斗!貴方また王属特務の方に行っていたそうね!」
掴みかかる勢いで言う。
拓「申し訳ありません、母様。」
俺は目を合わせない。
母様は王属特務が嫌いだ。
何故かというと、そこには亜莉亜がいるからだ。
亜莉亜の事が気に入らなくて仕方ないのだ。
それは今に始まったことではない。
目の前の母様の説教は他所に、俺は記憶に思いを馳せる──
あれは確か、王属特務としての初対面を終えた日だった。
霊王の御前での顔合わせの後、俺は亜莉亜を自宅に誘った。
こんなに素敵な素敵な隊長と働くということを、両親に自慢したかったのだ。
勿論、亜莉亜は乗り気ではなかったけど。
俺は無邪気に亜莉亜の手を握って我妻邸に行った。
最初に会ったのは確か文月だったっけ。
凄く驚いて、それから、「拓斗様をよろしくお願いします」って自分よりずっと小さな亜莉亜に頭を下げていたな。
そのすぐ後だったかな、母様が顔を見せたのは。
母様は亜莉亜を見ると、温かい笑みを見せ、俺が亜莉亜の事を紹介すると、僅かに表情を曇らせた。
そのときは何故かよく分からなかったけど、その後の母様の言葉で、俺は母様の顔を曇らせた理由を知ることになるのだ。
亜莉亜を帰した後、俺は母様の部屋に呼ばれた。
母様は俺と向かい側に座し、目を吊り上げて言った。
「あの子とは関わってはいけません」と。
どうして、と声を上げる俺に、母様は続けた。
「貴方は由緒ある貴族の子、あの子は汚い流魂街出身。どうしてかは貴方でも分かるでしょう?貴方とあの子は相容れぬ存在よ。」
でも亜莉亜は!
そう言おうとしたが、どうしても口から言葉が出てこなかった。
母様の顔が余りに怖かったのだ。
「分かった?拓斗。あの子に必要以上に近寄ってはなりません。ましてや触れるなんて、言語道断です。綺麗な貴方が穢れてしまいますからね。」
俺は衝撃を受けた。
貴族が何だ、流魂街が何だ、と。
俺が母様の忠告に従うことは無かった。
何事もなかったように亜莉亜に接し、仲を深めた。
それが母様をより怒らせた原因だった。
年を重ねるごとに母様は亜莉亜に対して厳しい考えをとるようになった。
何かにつけて悪態をつき、亜莉亜を罵倒するようになった。
それと同時に、俺と母様の心の距離は離れていった。
母様は亜莉亜を、俺を、理解してはくれないのだ。
秋「拓斗!聞いているの?」
金切り声で呼ばれ、意識を今に戻した。
秋「あんな女のことは早く忘れなさい。貴方だって分かったでしょう?霊術院で仲の良かったお友達を身代わりに生き残ったそうじゃないの。流石、流魂街出よね。自分が良ければ周りがどうなったって関係ないのよ。不潔で小汚い女。」
俺は俯いて唇を噛む。
口答えはしない。母様のことだ、もっと過激になるに違いない。
この人には逆らわない方がいい。
秋「貴方は違う!上流貴族の私の子。尊い血の流れる貴族の跡取りなの。いい加減にあんな女とは縁を切りなさい。拓斗、返事は?」
拓「……はい。」
聞こえるか聞こえないかという小さな声で返事をする。
胸が締め付けられるようだ。
亜莉亜はそんな人じゃない。
しかし、俺がこうすることでしか母様は落ち着いてくれない。
秋「──まあいいでしょう。長く外にいて体が冷えてしまったでしょう?中に入りなさい。今何か温かいものを用意させますからね。」
ふわりを微笑む母様に、ひとまず安堵する。
昔はずっと微笑んでいたのに、今となってはまるで別人のようだ。
何故母様がそこまで亜莉亜を嫌うのか、流魂街を嫌うのか、理解ができない。
でも、今はいい、それでも。
俺が我慢することで、平凡な日々を送れる。
母様も、亜莉亜も。
相変わらず気の強そうな顔をしている。まるで鬼だ。
秋「拓斗!貴方また王属特務の方に行っていたそうね!」
掴みかかる勢いで言う。
拓「申し訳ありません、母様。」
俺は目を合わせない。
母様は王属特務が嫌いだ。
何故かというと、そこには亜莉亜がいるからだ。
亜莉亜の事が気に入らなくて仕方ないのだ。
それは今に始まったことではない。
目の前の母様の説教は他所に、俺は記憶に思いを馳せる──
あれは確か、王属特務としての初対面を終えた日だった。
霊王の御前での顔合わせの後、俺は亜莉亜を自宅に誘った。
こんなに素敵な素敵な隊長と働くということを、両親に自慢したかったのだ。
勿論、亜莉亜は乗り気ではなかったけど。
俺は無邪気に亜莉亜の手を握って我妻邸に行った。
最初に会ったのは確か文月だったっけ。
凄く驚いて、それから、「拓斗様をよろしくお願いします」って自分よりずっと小さな亜莉亜に頭を下げていたな。
そのすぐ後だったかな、母様が顔を見せたのは。
母様は亜莉亜を見ると、温かい笑みを見せ、俺が亜莉亜の事を紹介すると、僅かに表情を曇らせた。
そのときは何故かよく分からなかったけど、その後の母様の言葉で、俺は母様の顔を曇らせた理由を知ることになるのだ。
亜莉亜を帰した後、俺は母様の部屋に呼ばれた。
母様は俺と向かい側に座し、目を吊り上げて言った。
「あの子とは関わってはいけません」と。
どうして、と声を上げる俺に、母様は続けた。
「貴方は由緒ある貴族の子、あの子は汚い流魂街出身。どうしてかは貴方でも分かるでしょう?貴方とあの子は相容れぬ存在よ。」
でも亜莉亜は!
そう言おうとしたが、どうしても口から言葉が出てこなかった。
母様の顔が余りに怖かったのだ。
「分かった?拓斗。あの子に必要以上に近寄ってはなりません。ましてや触れるなんて、言語道断です。綺麗な貴方が穢れてしまいますからね。」
俺は衝撃を受けた。
貴族が何だ、流魂街が何だ、と。
俺が母様の忠告に従うことは無かった。
何事もなかったように亜莉亜に接し、仲を深めた。
それが母様をより怒らせた原因だった。
年を重ねるごとに母様は亜莉亜に対して厳しい考えをとるようになった。
何かにつけて悪態をつき、亜莉亜を罵倒するようになった。
それと同時に、俺と母様の心の距離は離れていった。
母様は亜莉亜を、俺を、理解してはくれないのだ。
秋「拓斗!聞いているの?」
金切り声で呼ばれ、意識を今に戻した。
秋「あんな女のことは早く忘れなさい。貴方だって分かったでしょう?霊術院で仲の良かったお友達を身代わりに生き残ったそうじゃないの。流石、流魂街出よね。自分が良ければ周りがどうなったって関係ないのよ。不潔で小汚い女。」
俺は俯いて唇を噛む。
口答えはしない。母様のことだ、もっと過激になるに違いない。
この人には逆らわない方がいい。
秋「貴方は違う!上流貴族の私の子。尊い血の流れる貴族の跡取りなの。いい加減にあんな女とは縁を切りなさい。拓斗、返事は?」
拓「……はい。」
聞こえるか聞こえないかという小さな声で返事をする。
胸が締め付けられるようだ。
亜莉亜はそんな人じゃない。
しかし、俺がこうすることでしか母様は落ち着いてくれない。
秋「──まあいいでしょう。長く外にいて体が冷えてしまったでしょう?中に入りなさい。今何か温かいものを用意させますからね。」
ふわりを微笑む母様に、ひとまず安堵する。
昔はずっと微笑んでいたのに、今となってはまるで別人のようだ。
何故母様がそこまで亜莉亜を嫌うのか、流魂街を嫌うのか、理解ができない。
でも、今はいい、それでも。
俺が我慢することで、平凡な日々を送れる。
母様も、亜莉亜も。