「面白みのねぇ奴だな。」
唐突な言葉に、亜莉亜はムッとする。
『いきなり何なんで──』
「あんた、死神なんだろ？」
男は亜莉亜の話を全く聞こうとしない。
仕方なく亜莉亜は男のペースに付き合うことにする。
『死神ですけど。』
「あれか、平か。」
再びムッとする。
どうも、この男と話しているとイライラする。
『平隊士じゃないですけど。』
「嘘だろ？あんたみたいなのが席官かよ。」
男が見下すように笑う。
けれど、身分をばらすわけにはいかない。
それは、霊王から旅の許可を得たときに提示された条件だ。
だから、言いたいことをぐっとこらえる。
『……。』
「まぁいい。百歩譲ってあんたが席官だとしておこう。じゃあ、あんた、強いのか？」
そう聞かれて、亜莉亜は答えに迷う。
強い、と答えられる自信が無い。
けれど、弱い、と答えればまた罵倒されそうだ。
『それは──』
「ふーん。じゃあ、最初の質問に戻る。何してんだ、こんなとこで。」
それはすぐに答えられた。
『修業に来たんです。』
しっかりと男の目を見て言う。
すると、男の態度がわずかに変わった。
「──どうして？」
今までと異なり、静かに尋ねられる。
『強く、なりたいからです。』
迷い無く答える亜莉亜を、男はしばらくじっと見ていた。
その目が何だか恐ろしく、身がすくむのを亜莉亜は感じた。
只者じゃない、そう直感的に思った。
「へぇ、そこまで甘ちゃんって訳じゃなさそうだな。どうだ、俺が教えてやろうか？」
フラリと男が言った。
亜莉亜は、一瞬、自分の耳を疑った。
『へ？何を……』
「何、とはなんだよ。剣を教えてやるって言ってんだよ。不満か？」
半分ふてくされたようにそう告げる男。
『──強いんですか。』
亜莉亜がそう尋ねれば、男はニヤリと口角を上げた。
「なら、やり合ってみるか？」
ふいに男の手元が歪んだように見えた。
次の瞬間、男の手には斬魄刀が握られていた。
亜莉亜は目を見開いた。
そして──静かに闇鬼に手をかけた。