冷静な判断ができていたら。
勇敢な心を持っていたら。
おごり高ぶる気持ちが無ければ。
もっと私が強かったなら。
『ぅ……』
後悔が亜莉亜の思考を支配する。
しかし、落ち込んでばかりはいられない。
涙をこらえ、唇を噛みしめながらも、亜莉亜は立ち上がった。
『許さない──。姫香の仇はわたしが討つ！』
憎しみでいっぱいの瞳で大虚を睨む。
刹那、亜莉亜の霊圧が爆発的に上がった。
亜莉亜の纏う漆黒の霊子に、流石の大虚も身を引こうとする。
しかし亜莉亜は一瞬の隙も虚に与えなかった。
『死ね！』
ザシュッ！！
大虚の体から血が吹き出す。
虚が昇華されたのを見届けると、亜莉亜はすぐに姫香のそばへと戻った。
体温の少し下がった姫香の体を、静かに抱き起こす。
『姫香、何で私なんか庇ったの』
亜莉亜がそう呟くと、姫香の瞳が微かに開いた。
『姫香！』
姫「……馬鹿ね。何で泣いてんのよ。」
穏やかな表情の姫香。
『…ッ…だって…私のせい…』
姫「…私はね、自分の意思でここに残ったの。そして、自分の意思であんたを護った……」
そこまで語ると、姫香はにっこりと笑った。
姫「これって凄い事じゃない？未来の隊長格を護ったのよ。」
『姫香っ、私…』
亜莉亜の瞳から大量の涙がこぼれ落ちる。
姫「亜莉亜、あんたは生きなさい。それで、立派な死神になって。」
『！？嫌だッ！姫香も一緒に…』
姫「大好きだよ」
姫香は静かに目を閉じる。
亜莉亜はハッと息をのんだ。
『待って！姫──』
亜莉亜は、姫香の体から力が抜けていくのを感じた。
『や、やだ！姫香！目を開けてよ！！お願いだから』
「亜莉亜ちゃん！？」
突然聞きなれた声が響き、亜莉亜は涙でぐしゃぐしゃになった顔を向けた。