『な、何？』
姫「もしかして、彼氏？」
『は！？』
喜「そんな…！？」
夜「ほぉ」
姫香の爆弾発言により、空気が一瞬にして凍りついた。
『んなわけないじゃん！！変なこと言わないでよ！』
必死に取り繕う。
姫「でもあんた、その髪留め彼氏にもらったんじゃないの？ときどき、すっごく嬉しそうな顔しながらいじってるし。」
亜莉亜は驚いて、自分の髪留めに手を添えた。
落ち着いた紺色の上に、繊細な花たちが散らされたデザインで、所々に銀の装飾がしてある。
亜莉亜はこれを、とても気に入っていた。
実際のところ、この髪留めは拓斗がくれたものなのだが…
『これはアイツが！……ぁ。』
姫「よし、墓穴を掘ったわね！アイツって誰よぉ、白状なさいっ！」
『あ、いや、アイツってのは…』
部下？仲間？友達？幼なじみ？少なくとも恋人ではないが。
どうしても、拓斗にあてはまる言葉が見つからない。
どう説明したらよいのだろうか？
だが、王属特務の事をバラす訳にもいかない。
姫「アイツってのは？ねぇ、誰なのよ！」
『えっと…』
①恋人だと言う。
②瞬歩で逃げ出す。
亜莉亜の頭の中に、二つの選択肢が浮かんだ。
『……じゃ、また明日！！』
シュッ
姫香たちが言葉を発する前に、亜莉亜は瞬歩を使い、霊術院から脱出した。

『ふぅ、何とか逃げ切った。』
亜莉亜は、自分が家がわりにしている王属特務の隊舎へと到着した。
どうやら亜莉亜以外に人はいないようだったが、いつも通りに修業をする気にもなれず、亜莉亜は書庫から数札の本を持ち出し、それらを読むことにした。
どれも王族から提供された書物である。
ほどんどは、尸魂界に関する歴史書だ。
だが一冊だけ、王属特務専用の鬼道に関する書物が混じっていた。