ふと暖かい手が亜莉亜の頭に触れた。
『浮竹…』
混乱していた気持ちが、次第に落ち着いていく。
浮「亜莉亜、もう分かっただろう？君は一人じゃないんだ。だから、もっと自分を大事にしなさい。」
京「そうだよ、亜莉亜ちゃん。君は僕らや山じいの誇りなんだ。もっと胸を張って生きてもいいんじゃないかな。」
にっこりと微笑む浮竹と京楽を見ていると、何だか視界がぼやけてきた。
駄目だ、泣いちゃいけない。
亜莉亜は、手の甲で涙を拭うと、姫香の方に向き直った。
『姫香、ありがとう。』
姫「…ひくっ……またあんなこと言ったら、許さないからね」
『うん…！』

その後、亜莉亜はいつもの調子を取り戻し、陽彦との試合に余裕の勝利を飾った。
自分が散々侮辱していた相手に敗れた陽彦は、ショックでしばらくの間、霊術院に顔を出さなかったらしい…。

そんな事があってから一月程が過ぎたある日。
全ての講義が終わり、いつものように亜莉亜は友人たちと会話を楽しんでいた。
いつのまにか話題は、それぞれの家の話になっている。
姫「夜一の家って、めちゃくちゃ広いよね～。あたしんちとは大違い。」
夜「それほどでもないと思うがのぅ。まぁ、なんなら、今度遊びに来るか？」
姫「えっ！？マジ？いいの？行く行く！今度休みの日に、このメンバーで行こうよ！ねっ？」
喜「良いんじゃないスか？──亜莉亜サンは？」
喜助に尋ねられ、私は言葉につまった。
残念ながら、休みの日はほとんど、王属特務の任務で埋まっている。
私は、慎重に言葉を選びながら、三人からの誘いを断る事にした。
『ごめん。休みの日はちょっと、忙しくてさ。だから、あの…』
姫「ふーん。」
亜莉亜の言葉を聞き、何かをたくらんでいるかのように、姫香が口角を上げた。