亜莉亜は何も答えない。
いや、答えられない。
忘れかけていた恐怖が、孤独が、心の奥底から這い上がる。
陽「仕方ないなぁ。早く殺してあげないと。」
亜莉亜が目を見開くのと同時に、陽彦は大きく踏み込んだ。
カァン！
反応が僅かに遅れたせいで、亜莉亜の木刀は簡単に払われてしまう。
『…ッ』
駄目だ。
陽彦の言葉のせいで、集中ができない！
陽「弱すぎ。こんなんで、よく勝ち抜いてこれたねぇ。」
陽彦は、亜莉亜が体勢を立て直す前に、もう一度木刀を振るおうとする。
『！』
気がつくと、陽彦の木刀が風を切り、亜莉亜の頭上に迫っていた。
亜莉亜は咄嗟に目を瞑る。
しかし…
『……？』
数秒がたっても、亜莉亜に斬撃が当たることはなかった。
恐る恐る目を開ける亜莉亜の視界には、ピンク色の着物がはためいていて。
『京、楽？』
京「試合を中断させてごめんね。無事かい？亜莉亜ちゃん。」
そう、そこには、八番隊隊長の京楽春水の姿があった。
どうやら、京楽が陽彦の木刀を止めたらしい。
暮「ちょっと！いくら護廷の隊長格だからって、院生の試合には……」
暮街がそう言いかけたとき、亜莉亜の隣に人影が現れた。
浮「確かに、我々には霊術院の指導に口を出すことはできない。だから最初は静かに観戦させてもらっていたのだが、」
京「これはちょっと酷いと思ってね。」
京楽は、陽彦の木刀を静かに下ろした。
陽「……」
京「確かに、精神的に相手を追い詰めて相手の隙を突くって戦法はあるけど──健全たる霊術院での試合では、あくまで正々堂々戦わせるべきでしょ。クラスメイトが罵りあうもんじゃない。」
暮「それは……」
京「それに、彼は本気で亜莉亜ちゃんを斬るつもりだった。そうでしょ？」
陽「チッ…」