姫「ただいま～！」
暮街に言われたことを全く気にしていないような明るさで、姫香は亜莉亜たちの元に戻ってきた。
『もう、何でわざと転んだの？』
亜莉亜は真っ先に問いかけた。
姫「えぇっ！？わざとじゃないよぉ……って言っても、亜莉亜には通じないもんね。理由は一つだよ。単に、面倒くさかったから。これはトーナメント形式だし、一度負ければ後は自由でしょ？」
堂々と答える姫香に、亜莉亜はガタッと肩を落とした。
『……ほんと、勿体ないよ。』
亜莉亜の言葉にも、姫香は楽しそうに笑うのみだった。

その後も試合は続き、ついに準決勝となった。
残ったメンバーは、亜莉亜、夜一、喜助と……信厳寺陽彦（シンゲンジ ハルヒコ）。
この信厳寺陽彦という人物こそが、亜莉亜の準決勝での相手である。
陽彦は、発展途上中の信厳寺家の一人息子である。
見た目も性格も平凡的ではあるが、自分の嫌いな人にはとことん嫌がらせをするという悪い癖を持っている。
なるべく関わりたくない相手だったのに。
暮「ではまず、神影対信厳寺の試合を始める。」
暮街はそう言い、二人を向かい合わせた。
口を固く閉ざし、攻撃的な視線をぶつける二人。
暮「それでは、始め！」
暮町の合図がかかるも、二人は微動駄にしない。
『…（信厳寺陽彦…私たちのように、小さいときから剣術指導を受けてるはず。油断はできない！）』
先に張りつめた空気を破ったのは、陽彦の方だった。
陽「まだ生きてたんだね。」
『！』
陽「流魂街出身の死神気取りが。」
そう言った口元がニヤリと笑う。
『…ッ！』
聞いてはいけない。
落ち着け。
自分のペースを保て。
この試合に負けるわけにはいかない。
そう思ってはいるのに、体は強ばったまま。
やばい。
このままじゃ相手の思うつぼ。
陽「諦めたら？死神気取りなんかが俺に勝てるわけないじゃん。」
さらに追い討ちをかけるように、陽彦は言った。