「おい、お前ら！！何やってるんだ！」
どこかで聞いたことのある…ような男の声が響いた。
確か、この人は…
『吉田、先生？』
刹羅は戸惑いがちに吉田の名前を呼ぶ。
吉田は、目をつりあげ険しい表情で刹羅たちに近づいた。
吉「お前ら、生徒一人を囲んで何やってた！！」
怒りを露にする吉田に、刹羅を呼び出した生徒たちは散り散りになって逃げていった。
残されたのは、刹羅と吉田。――と、気を失って倒れている生徒。
まずい事になったか…？と刹羅は心配するが、それは杞憂に終わった。
吉「牙条、大丈夫か、怪我は無いか！？」
吉田は刹羅の両肩に手を置き、思い切り揺さぶった。
『肩が…痛いです。』
吉「あいつらにやられたのか！？」
『いえ、今…』
吉「何てことだ…やっぱりあいつらが！！」
『今掴んでる、肩が、痛い！』
刹羅は叫んだ。
というより、亜莉亜が叫んだ。
咄嗟に素が出てしまった。
やばい、これは牙条刹羅の言葉じゃないぞ。
いくらこいつが鈍そうだからって、流石にばれたかもしれない…
亜莉亜は吉田を盗み見た。
吉「あ…すまない…」
吉田は、刹羅に叱られて気落ちしているだけだった。
『いえ、いいんです！！心配してくださってありがとうございました。』
紛らわすように刹羅は言った。
吉「…そうか？すまないな。つい熱が入ってしまって。――どうだ、霊術院には慣れたか？」
『まあまあ…ですね。』
吉「実はな、あの編入試験のときから、君が気になって仕方が無いんだ――」
吉田は、困ったように目を伏せた。
『はあ、そうです――って、はぁ！？』
刹羅の表情が、一瞬にして凍りついた。
…こいつ、そういう趣味だったのか！？
『先生、それは一体、どういう…』
吉「君のあのときの気迫、いや殺気、あれは本当に素晴らしいものだ！！もっと君の戦いを見たい！だから、ぜひ君の実技の指導を俺に任せて欲しいんだ！！」
ほっとした。
吉田先生が天然馬鹿で安心した。
『そんなことでしたら…どうぞご勝手に。』
吉「本当か！？良いのか！？ありがとう！！本当にありがとう！！！」
吉田は再び刹羅の肩をがっしりと掴み、強烈に揺さぶった。
刹羅は、もう何も言えなかった。