《話があるから、この時間が終わったら校庭に来い。》
きた。
これぞ恒例の呼び出しだ。
心の中で、亜莉亜は深い深いため息をついた。
まあ、最初からこうなるだろうことは分かってたけどな。
いきなり編入してきて、顔はほとんど見せないし周りに馴染もうともしない、しかも成績優秀な奴なんて、これほど虐めの標的になるものはない。
「逃げたら殺す。」
何も反応しない刹羅に苛立ったのか、先程の男子生徒が小声で言ってきた。
刹羅は隣を一瞥しただけで、それ以外になにも動きを見せなかった。
信「牙条！」
採点が終わったのか、信厳寺が刹羅を呼んだ。
『はい。』
刹羅は無表情で席を立った。
信「…」
信厳寺は憎らしそうに頬をひきつらせ、教卓の上に刹羅の答案用紙をたたき付けた。
『満点、みたいですね。』
刹羅は余裕の表情で紙を集め受け取った。
そして…
クシャクシャ…
答案用紙を丸めて、席に帰る途中でゴミ箱へ捨てた。
信厳寺をはじめ、その場にいた生徒たち全員が我が目を疑った。


雄大な青空の下、刹羅はフェンスに背を預け、立っていた。
殺風景な校庭には人影が無い。
どこのクラスも使わない時間を狙ったか、と考える。
恐らく、休み時間だけでは帰れないだろうな、とも。
しばらく刹羅が羽を伸ばしていると、先程の男子生徒が他の生徒を数名従えて、刹羅の前に現れた。
『何か用ですか。』
刹羅はそ知らぬ顔で聞いた。
「お前、いきなり入ってきたくせに、何様のつもりだ。」
『何様…？俺はただ、自分の実力を活用しているだけだ。』
刹羅の口調が、挑戦的なものになる。
相手を逆撫でしてしまうだろうことは、重々承知していた。
「んだと！？やっぱり、てめぇは一度潰す必要があるみてぇだな。」
男子生徒はそう言うと、後ろに控える生徒たちに目配せした。
それを合図に、生徒たちが刹羅を取り囲む。
「いきまーす！」
一人の男子生徒がふざけてそう宣言すると、刹羅の腹部めがけて全力の蹴りを繰り出した。
ドカッ！！
鈍い音がして、倒れこむ――のは、刹羅ではなく男子生徒の方だった。
『次は？全員まとめてでも良いですよ。』
「この…！」
刹羅の実力を見てしまった生徒たちは、信じられないといった様子で刹羅を見ている。
そのとき。