第十五話 ー虐めー
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カタン…
ゆったりとした空気が流れる雨乾堂に、ししおどしの透き通った音が響いた。
いつも通りの時間を過ごすこの場所。
その縁側に腰かけ、池の中を自由気ままに泳ぐ鯉を眺める人影が一つ。
彼の手には、愛用の徳利とおちょこが握られていた。
京「最近の零番隊、随分荒れてるみたいだねぇ。」
京楽はそう言っておちょこに注がれた酒を一気に呷ると、振り返ってふにゃりと笑った。
浮「亜莉亜がいなくなってから、皆塞ぎこんでるみたいだしね。」
浮竹は困り顔で言うと、布団から体を起こした。
京「おや、調子は良いのかい?」
浮「寝ていられる気分じゃないんだ。」
京「やっぱり心配だもんねぇ、彼らのこと。」
京楽は徳利を片手で掴むと、おちょこに勢いよく注ぎ込んだ。
カタン…
一定の時を経て、ししおどしが溜めていた水を吐き出した。
京「ここにいると、時間の流れを忘れられるはずなのに。」
京楽は目を細めた。
京「忙しかったら、こんな気分にはならないだろうね…」
浮「珍しいな、京楽が弱音を吐くなんて。」
浮竹は布団から立ち上がると、縁側に出て、京楽の隣に静かに腰を下ろした。
浮「何かあったのか?」
互いには目を向けずに話す。
京「──拓斗君のことが心配でね、さっき零番隊隊舎に行ったんだ。」
京楽はどこか遠くに視線を漂わせながら、ぼそぼそと呟いた。
その切なげな表情からいつもの飄々とした雰囲気は少しも感じられない。
浮「拓斗君は何か言ってたかい?」
浮竹がそう尋ねると、京楽は肩を落とし小さく首を振った。
京「話はしなかった。…というか、会えるような状況じゃなかった。」
浮「…」
京「隊舎に入ろうとしたら、中から杏樹ちゃんと拓斗君の声が聞こえてきてね。酷く言い争っていたよ。その中で、拓斗君が言ったんだ。──王族へ誤魔化すためであっても、裏切る素振りをしていいのか、と。亜莉亜ちゃんは僕たちの考えを知らないから、彼女にとっては僕たちの行動は立派な裏切りだ、と。それから、もう誰も信じられない、と。」
京楽の声が重く沈む。
京「僕たちのとった行動は正しかったのかなぁ…」
おちょこに溜められた酒に浮かぶ波紋を、京楽は悲しそうにただ見た。
浮「…俺たちにとれる方法は、あれしかなかった。」
京「亜莉亜ちゃんは可愛くて綺麗で頭が良くて、とても強い。彼女なら、僕たちの気持ち分かってくれるって──軽く考えすぎちゃったのかなぁ。」
京楽は大きなため息をついた。
京「何処にいるんだろうね、彼女は。楽しくやっててくれたらいいんだけど。」
浮「きっと元気にしている筈だよ。あの子は、約束を決して破らない。必ず元気に戻ってくるさ。」
浮竹は、京楽を励ますようにそう言った。
京「そう、だよねぇ。」
京楽は遥か遠い空を仰いだ。
ゆったりとした空気が流れる雨乾堂に、ししおどしの透き通った音が響いた。
いつも通りの時間を過ごすこの場所。
その縁側に腰かけ、池の中を自由気ままに泳ぐ鯉を眺める人影が一つ。
彼の手には、愛用の徳利とおちょこが握られていた。
京「最近の零番隊、随分荒れてるみたいだねぇ。」
京楽はそう言っておちょこに注がれた酒を一気に呷ると、振り返ってふにゃりと笑った。
浮「亜莉亜がいなくなってから、皆塞ぎこんでるみたいだしね。」
浮竹は困り顔で言うと、布団から体を起こした。
京「おや、調子は良いのかい?」
浮「寝ていられる気分じゃないんだ。」
京「やっぱり心配だもんねぇ、彼らのこと。」
京楽は徳利を片手で掴むと、おちょこに勢いよく注ぎ込んだ。
カタン…
一定の時を経て、ししおどしが溜めていた水を吐き出した。
京「ここにいると、時間の流れを忘れられるはずなのに。」
京楽は目を細めた。
京「忙しかったら、こんな気分にはならないだろうね…」
浮「珍しいな、京楽が弱音を吐くなんて。」
浮竹は布団から立ち上がると、縁側に出て、京楽の隣に静かに腰を下ろした。
浮「何かあったのか?」
互いには目を向けずに話す。
京「──拓斗君のことが心配でね、さっき零番隊隊舎に行ったんだ。」
京楽はどこか遠くに視線を漂わせながら、ぼそぼそと呟いた。
その切なげな表情からいつもの飄々とした雰囲気は少しも感じられない。
浮「拓斗君は何か言ってたかい?」
浮竹がそう尋ねると、京楽は肩を落とし小さく首を振った。
京「話はしなかった。…というか、会えるような状況じゃなかった。」
浮「…」
京「隊舎に入ろうとしたら、中から杏樹ちゃんと拓斗君の声が聞こえてきてね。酷く言い争っていたよ。その中で、拓斗君が言ったんだ。──王族へ誤魔化すためであっても、裏切る素振りをしていいのか、と。亜莉亜ちゃんは僕たちの考えを知らないから、彼女にとっては僕たちの行動は立派な裏切りだ、と。それから、もう誰も信じられない、と。」
京楽の声が重く沈む。
京「僕たちのとった行動は正しかったのかなぁ…」
おちょこに溜められた酒に浮かぶ波紋を、京楽は悲しそうにただ見た。
浮「…俺たちにとれる方法は、あれしかなかった。」
京「亜莉亜ちゃんは可愛くて綺麗で頭が良くて、とても強い。彼女なら、僕たちの気持ち分かってくれるって──軽く考えすぎちゃったのかなぁ。」
京楽は大きなため息をついた。
京「何処にいるんだろうね、彼女は。楽しくやっててくれたらいいんだけど。」
浮「きっと元気にしている筈だよ。あの子は、約束を決して破らない。必ず元気に戻ってくるさ。」
浮竹は、京楽を励ますようにそう言った。
京「そう、だよねぇ。」
京楽は遥か遠い空を仰いだ。