「こちらが、お前たちの担任を務めることになった、一回生第一組担任の信厳寺先生だ。くれぐれも失礼の無いように。」
亜莉亜たちを教室まで案内し終えた受付の職員は、それだけ言って事務室に帰って行った。
信「へぇ、君らが例の編入希望者か。出身はどちらとも流魂街。…残念だったね。流魂街出身は、どう足掻いたって死神気取りにしかなれないんだよ。」
信厳寺と呼ばれた教師は、二人を見下すように言った。
《死神気取り》
亜莉亜はその言葉にピンときたものがあった。
《まだ生きてたんだね》
《流魂街の死神気取りが》
記憶の奥底に眠っていた言葉が、場面が、鮮明に蘇る。
信厳寺…
信厳寺陽彦。
そう、こいつはあのときの…！
亜莉亜の表情が厳しくなる。
信「貴族でなければ、俺は近寄りたくもないんだ。まぁ、せいぜいうちのクラスを乱さないように努力しろ。俺は特に面倒も見ないからな。」
何か汚いものを見るような目つきで二人を睨む信厳寺。
亜莉亜は眉間に皺を寄せた。
『失礼ですが、それだけ仰るのであれば、信厳寺先生はそれ相応の実力をお持ちとみて宜しいんですね。』
何もかもを見抜いているような言葉に、信厳寺の霊圧が僅かに揺らいだ。
信「――少なくとも、君らに負けるほど弱くはない。」
『一度も、流魂街出身の死神に負けたことはないんですか。』
信「…元零番隊隊長で、今は大逆人の神影亜莉亜。知ってるだろ？奴だけには学生時代、一度だけ負けたことがある。」
『それでもなお、流魂街出身者を馬鹿にするんですか。』
亜莉亜がそう言えば、信厳寺は口元を不気味に歪めた。
信「アイツは罪人。しかも、あのときは少し油断しただけだ。今なら、決して負けることはない。奴の面子をぶっ潰すことができる。」
自信満々にそう言った信厳寺。
亜莉亜は思った。
いつか必ずこいつの面子をぶっ潰しに来よう、と。
『それほどお強い信厳寺先生に、どうして王族から誘いがこないんでしょうね。』
亜莉亜、いや、刹羅は黒髪の間から挑戦的な視線を信厳寺に向けた。
信「偉い奴ほど人の価値が見えないんだよ。全く、王族も惜しいことをする。この俺を零番隊に引き入れないなんて。」
いや、お前に対する評価は間違いないんじゃないか？
『信厳寺先生は一度鏡をご覧になるべきですね。』
亜莉亜はそう吐くと、瑚絽音を引き連れてさっさと教室に入った。
信「俺の顔に文句があると…？それよりも、お前のその奇妙な長髪をどうにかしろ！！」
『朽木白哉に更木剣八、京楽春水、浮竹十四郎、阿散井恋次…他にも長髪はたくさんいますよ？』
亜莉亜がそう言ってやれば、信厳寺は押し黙るしかなかった。



心に深く、深く傷をつけてくれた。
あのときの侮辱の言葉、少しも忘れてないからな。
覚悟しろよ、信厳寺陽彦。
おごり高ぶる少年であったことを後悔しろ――