『それより、瑚絽音。早く朝食をとれ。今日から修業始めるぞ。』
亜莉亜は居間に上がると、瑚絽音の隣に座った。
瑚「は、はいなのです！」
瑚絽音はちゃぶ台に準備されたご飯を、一心に食べ始めた。
喜「あら？亜莉亜サンは食べないんスか？」
何時もの定位置に座りながら、喜助は尋ねた。
『ん？いや…あまり食欲が無くて…な。』
夜「ほぉ、ダイエットというやつか、亜莉亜。」
黒猫姿の夜一がちゃぶ台に飛び乗ると、亜莉亜の正面でちょこんと座った。
喜「ええ！？亜莉亜サンダイエットして――って、必要ないと思いますよ？亜莉亜サンは十分ナイスバディっスから！いや、もしかして、まさか好きな人でも…」
慌てる喜助の反応を受け、亜莉亜は顔を赤くした。
『ち、違うからな！！断じて違う！勝手に話を作るんじゃないっ！』
半分叫ぶようにそう言えば、喜助と夜一は呆気にとられた顔をした――かと思えば、数秒してから二人でケラケラと笑いだした。
『な、何だ！？』
夜「そんなに焦らんでもよい。冗談じゃ、冗談。」
喜「そうですよ、亜莉亜サン。――それにしても、食欲が無いなんて、困りましたね。顔色も少し悪いようですし。熱は…」
喜助はそう言うと、亜莉亜の額に手をのばした。
『あ…ちょっ…。』
慣れない動作に亜莉亜はまた焦る。
喜「熱は無い、みたいっスね。ですが、念のために無理はしないでくださいね。」
喜助はそう言って亜莉亜から手を離すと、にこりと微笑んだ。


瑚「ここは…？」
地下に現れた巨大な空間に、瑚絽音はあんぐりと口を開けた。
『ここは勉強部屋と言ってな、修業のための空間だ。ここから霊圧が漏れることはないから、本気で修業できるぞ。』
穏やかな声色で言ってから、亜莉亜は途端に表情を消し、瑚絽音に無機質な目を向けた。