「そうよ。凄いでしょ？」
『あぁ、凄い。他には何ができるんだ？』
「…」
女はキッと亜莉亜を睨んだ。
『…』
亜莉亜は苦笑いする。
「別にさぁ、あたしはあんたを認めた訳じゃないのよ？」
『だろうな。』
「ただ気まぐれで助けてあげてるだけなの！」
『そうか。』
「妙な詮索は認めないわ。あたしの事が知りたいなら、正々堂々あたしを倒してみせなさいよ！」
『分かった、分かった。向こうについたら時間をとろう。それで文句無いな？』
小さな子供をなだめるかのような口調で亜莉亜は言った。
「…フンッ！」
扱い方に不満があったらしく、女はそっぽを向いた。
「さっさと出ていきなさい！10秒で準備できなきゃ、もう知らないから。」
『はいはい。』
亜莉亜は女に背を向けた。
意識が途切れる寸前、遠くに咲く一輪の青い花を見つけ、亜莉亜は穏やかに微笑んだ。

『瑚絽音、手。』
瑚「へ？…手、ですか？」
訳もわからず手を差し出す瑚絽音。
亜莉亜はその小柄な手をしっかりと握り、もう片方の手を斬魄刀の柄にかけた。
瑚「亜莉亜…？」
『少し苦しいかもしれないが、我慢してくれ。』
瑚「？…どうかしたのですか？」
亜莉亜は瑚絽音の問いには答えず、斬魄刀に自分の霊圧を流し込んだ。
その瞬間、目を開けていられないほどの光が二人を包み込んだ。

『まさか…』
亜莉亜は目の前にある《浦原商店》と書かれた看板に、驚きを隠せなかった。
『これほどの精度だとは…お前は一体何者なんだ。』
腰にさされた白い刀に触れる。
ますます興味が湧いてきた。
早くお前を使いこなしたい。
そんな思いでいっぱいになった。
『ん？』
ふと裾を引っ張られ、亜莉亜は目線を下げた。
瑚「わぁ…猫ちゃんなのです！」
目を輝かせる瑚絽音を他所に、亜莉亜は足元の黒猫と目を合わせ、口角を上げた。
黒猫は二人を歓迎するように鳴くと、スタスタと浦原商店に入っていった。
『…相変わらずだな。』
亜莉亜は苦笑しつつも、瑚絽音の手を引き、黒猫の後に続いて商店に足を踏み入れた。