瑚「ひくっ…良かった、です…」
『ったく、無茶しやがって。だが…よく頑張ったな。』
亜莉亜は泣きじゃくる瑚絽音を優しく抱き締めた。
瑚「…あれ？刀…」
瑚絽音を離すと、亜莉亜の持つ抜き身の刀に瑚絽音は首をかしげた。
『あぁ、これか。』
亜莉亜は刀を持ち上げた。
純白の柄に、少し抑えた黄金色の鍔（つば）。
袖白雪を連想させるような真っ白な刃には、赤い血がよく映えていた。
瑚「闇鬼、じゃないのです。」
『まぁな…。』
亜莉亜は腰にささっている闇鬼に軽く触れた。
『だが、詳しい話は後だ。』
亜莉亜がそう言ったのと、瑚絽音の悲鳴が重なった。
キィンッ
背後から降り下ろされた刃を、亜莉亜は後ろ手で振り払った。
ナ「てめ…何で、生きてやがるんだよ！！」
憎悪の目で亜莉亜を睨むナスティー。
右肩からはダラダラと血が流れているものの、その動きは依然鋭かった。
『再生はしてない、か。』
探るように視線を滑らせれば、ナスティーの表情がぴくりと動いた。
『貴様には聞かなければいけないことが出来た。しかしその前に…少々遊んでもらおうか。随分となまってしまったから、肩慣らしがしたい』
亜莉亜は不敵な笑みを見せると、姿を消した。
ナ「ッ！？」
ギンッ
四方八方からナスティーを襲う亜莉亜の刀。
激しく体を動かしているのにも関わらず亜莉亜は涼しい顔をしているが、対するナスティーは亜莉亜の姿を見切る事に必死なようで、苦しげな様子を見せている。
瑚「亜莉亜…凄いのです。」
ぺたりと地面に座り二人の争いを見ていた瑚絽音は、ぽつりと言葉を漏らした。
その瞳には、二人の姿が"はっきりと"映っていた。