ナ「さっさと殺してやりたいが、《破面との戦闘で殉職》なんて、弱者の死因にはかっこよすぎると思わねぇか？」
ナスティーは不気味な笑みを浮かべると、片手で亜莉亜の首を握り、立たせた。
『っ！』
息がつまり、徐々に抵抗も弱くなる亜莉亜。
ナ「《崖から転落して死亡》ってくらいが丁度いいんじゃないかないか？ぁあ？」
『！…や、め…下ろ、…」
ナスティーの思惑に気付き、苦しい息の間から必死に声を絞り出す。
ナ「よし、決定だ。それでいこう。」
最早亜莉亜を殺すことしか考えていないナスティーは、亜莉亜の言葉を軽く受け流し、見通しの良い空へと舞い上がった。
そしてある一点に視線を留まらせると、口角を上げ、一気にその場所へと移動した。
『…』
宙につき出される自分の体。
――あぁ、もうお仕舞いか。
悪いな、みんな。
約束、守れそうに無い。
でも、私はもう無力だから…
これで良いのかもしれない。信じて、裏切られて、信じて、また裏切られて。
しょうもない人生だった。
やっと別れを告げられる。
馬鹿な私と歪んだ世界に。



ふいに、体が宙に浮いた。
満足げな表情の奴と地上が、急速に離れていく。
ごうごうと鳴る風の中、私の名が聞こえ…


瑚「はぁ、はぁ…」
もう、どれくらい走っているのだろう。
無我夢中で逃げていたため、途中の記憶がほとんどの残っていなかった。
腕の中には、まだ目を覚まさずぐったりとしている弟がいる。
息は苦しいが、こんなところで立ち止まるわけにはいかなかった。
大切な弟を護れと、そう言われたのだ。
彼女は今、自分の身を盾にして時間を稼いでくれている。
ここで逃げるのを止めれば、それは彼女の意思を無駄にしてしまうことと同じ。
瑚「逃げなきゃ、遠くに…」
瞬を抱え直して、一心不乱に走る。
ドンっ！！
瑚「あっ…！」
何かに正面からぶつかってしまい、尻餅をついた。
相手を確認しようとして顔を上げた瑚絽音。
その表情は一瞬で凍りついた。