拓「そこまで予測できてた上で、先輩は亜莉亜に危険な道を選ばせたわけ、ね。」
乃「…仕方ねぇだろ？王族を抹消するにはあのくらいの力は出させなきゃな。」
拓「冗談じゃない…ッ。あんたは、亜莉亜を道具として使うつもりだったってことかよ！」
乃「ま、そういうことになるな。奴には王族をぶっ潰してもらえさえしたら十分だった。…まだ文句があるか、坊主。結果オーライだろ？結局アイツは生きてるんだから。」
拓「結果オーライ…だって？#亜莉亜は力を失ってるかもしれないのに？」
乃「たかが力。失っても多少落ち込めば済むことだ。」
拓「…何も知らないんだね、先輩は。亜莉亜にとってどれくらい力が大切なものか。彼女がどんな思いで今まで力を磨いてきたか…ッ！」
悲痛な声で拓斗は叫んだ。
乃「知らねぇな。俺は個人の昔話にはさっぱり興味が無いんだよ。」
ケロリと答えた乃雅に拓斗は何か言おうとしたが、無駄だと感じ、悔しそうに口を閉じた。
拓「俺は君みたいな奴が大っ嫌いだ。」
拓斗はそう言い残し、乃雅の前から姿を消した。

ヒュッ！ヒュッ…
風を切り裂く音が微かに聞こえる。
『…まだだ。』
額に汗を光らせながら、亜莉亜は姿勢を立て直す。
亜莉亜は既に修業を始めていた。
その手に握るのは本物の斬魄刀であって、振り回すたびに刃が煌めいている。
何がなんでも力を取り戻したくて一心に闇鬼を握っている亜莉亜だが、霊圧を失った体で闇鬼を握ることは楽ではなかった。
『…ッ！』
フラりと体が揺れて、亜莉亜は地面に膝をつく。
立ち上がろうとするが、体に力が入らなくて…諦めた亜莉亜はどさりと地面に寝転がった。
視界一面に広がる青空が眩しくて、少しだけ目を細める。
その時、亜莉亜の目の前にチェーンにぶら下がった一つの指輪が差し出された。
亜莉亜はそれを見て、目を見開いた。