『瑚絽音…』
黙々と食事の準備を進めている瑚絽音に、声をかける。
瑚「亜莉亜…どうかしましたですか？」
きょとんとした表情で瑚絽音は振り返る。
『いや…何か手伝うことはないかと』
瑚「大丈夫ですっ！！」
『…』
即答されてしまい、亜莉亜は頭を抱えた。
あの日からもう数日がたった。
元から深い傷を負っていなかった亜莉亜はほぼ完全に回復し、何か瑚絽音たちにしてあげれることはないかと模索していた。
『なぁ…もう傷は治ったんだぞ？』
瑚「むー…じゃあ、瞬くんを手伝ってきてほしいのです。」
外で薪を拾っているはずだから…と言う瑚絽音。
『分かった。』
亜莉亜はそう言ってから、ふと気になっていた事を尋ねた。
『そういえば…ここは流魂街のどの地区だ？』
瑚「ここは、北流魂街二八地区・祇蝶（ギチョウ）というです。心配しなくても大丈夫なのです。特にこの辺りは極端に人口が少ない土地ですから。歩き回っても他の人に見つかることはないのです。」
『なぜもっと人がいるところに住まない。お前たち二人だけでの生活は大変だろう？』
瑚「でも、この区画で人が多い場所は…人売りの拠点なのです。」
『人売り…だと？』
まだここは二八地区。
それなのに、そんなに治安が悪いのか？
私は衝撃を受けた。
瑚「人売りは拠点を次々に変えるです。それで、標的にした地区の人間を他の地区に売りとばすのです。」
『それで…この辺りには人が少ないのか。』
私がそう言うと、瑚絽音は悲しそうに頷いた。
瑚「丁度襲撃があったときこの家には誰もいなかったので、私たちは見つからずにすんだのです。」
『そうだったのか。…嫌なことを思い出させてすまなかった。瞬を手伝ってくる。』
私は暗い気分を振り払い、家の外に出た。