懐かしいな、この感じ。
少し古びたこの感触に、堂々とした《零》の文字。
そう、これが、彼女を追い詰めた零番隊だ――。
拓斗は少し険しい表情になった。
拓「俺は一体、何がしたいんだろ？」
弱々しい呟きは、静かな空気に溶けて消えた。
久しぶりに仲間に会えるのは嬉しいが、裏切者たちと顔を合わせるのは…正直ごめんだ。
でも…進むしかないよぬ。
俺は一歩を踏み出した。
亜莉亜が大好きだった彼らはきっと落ち込んでいるだろうから…
せめて俺は気丈に振る舞わなければ。
そう気合いを入れ、拓斗は零番隊隊舎の扉を開けた。

カチャリ…
一斉に俺に視線が集まった。
みんな、すごく驚いてる。
それはそうか。
刑期100年の死神がもう出てきちゃったんだからね。
杏「副隊長！まさか、脱獄しちゃったんですか！？」
机に顔を伏せていたらしい杏樹に、本気で心配されてしまった。
拓「違う違う！色々あって、正式に刑期短縮されたの。…って、杏樹、何て顔してんの――」
腫れたまぶたに、充血した目…きっと、いっぱい泣いたんだね。
拓「――ごめんね。」
かけてあげられる言葉が見つからなくて、俺は無意識にそう呟いていた。
杏「副隊長、何で謝るんですか？謝らなくちゃいけないのは、私たちのほうですよ！」
拓「ん？」
杏「罪を…全部背負わせてしまいました。本当は私たちも、牢に入らないといけなかったのに！！」
杏樹は悲痛な声で、叫ぶように言った。
拓「…なぁんだ。その事なら、気にしないでって言ったでしょ？ほら、泣かないの。」
ぽんぽんと杏樹の頭を撫でる拓斗だが、杏樹の涙は一向に止まらない。
龍「一人でかっこつけてんじゃねぇよ、副隊長。」
今度は、そっぽを向いた龍が言った。