そんなことがあったから、俺は今回、四大貴族や上流貴族に書状を送った。
もちろん、これを知らない文月たちには無茶だと言われてしまったが…。
俺は信じてる。
奴らは必ず嘆願書を書いてくれる。
なんたって大きな借りがあるんだからな、この我妻家に。
そしたら拓斗を牢から解放する。
拓斗…お前のことだから、亜莉亜ちゃんが心配で今もずっとそわそわしてるんだろうな。
待ってろよ。
あともう少しで出してやるから…。
「真、真娑斗様ぁっ！！」
ったく…文月め。
騒がしいやつだ。
真「何があった。」
俺は起き上がり、襖を勢いよく開けた。
文「し、書状が…貴族からの書状が山のように届いております！」
目を白黒させながら報告する文月。
俺の口元に自然と笑みが浮かんだ。

冷たい石の床に、響く一人の足音。
こんな場所に誰が？
ま、禁固百年の俺にはどうせ関係ないよね。
そんなことを考えていると、ふいに足音が止まった。
俺の体にかかる、誰かの影。
あれ？
俺に用事だったのかな…。
俺は顔を上げた。
逆光のせいでその人の顔は見えない。
しかし格好から、この牢を管理しているであろう役人であることは分かった。
カチャカチャと牢の鍵をいじる役人に、俺は不信感を抱く。
カチャリ…
ついに牢の鍵が開き、扉が開けられた。
俺の前にまっすぐと立つ役人。
拓「俺に、何か用？」
冷たい声で言う。
「我妻拓斗。刑期短縮命令により、本日出所だ。」
拓「そう。…って、え！？」
意味がわからない。
何故もう出所？
しかも百年が数日になっちゃった。
一体どういうこと――
「四大貴族を始めとする、多数の貴族からの嘆願書のため、刑期が短縮された。」
拓「そんなはずが…でも…」
「とにかく出所だ。早く牢を出てくれ。」
拓「分かったよ。」
役人にせかされ、ゆっくりと牢を出る。