夢を見た。
俺が我妻家の当主だった頃の――。
まだ拓斗は俺の腰丈程も無くて。
常に母親にくっついていた。
母親に甘えるのが大好きで、悲しいことに俺にはあまりなついていなかった。
あの頃の拓斗は本当に愛らしかったなぁ…。
なんて昔話をすれば、拓斗のやつは怒るだろうな。
まぁ、面白そうだから、今度亜莉亜ちゃんの前ででも話してやろうか。

当時、我妻家は中流貴族でしかなかった。
しかし、我妻家には才のある者が多くあり、金銭面では上流貴族以上の力を持っていた。
生活は裕福で、何も不自由はなかった。
そんなときだった。
ある上流貴族が王族や四十六室に反旗を翻したのは。
その貴族は五大貴族にも勝るほどの実力を持っていて、非常に優秀な科学者を輩出することでも有名だった。
謀反の理由は中流貴族である俺たちには知らされなかったが、その謀反を制圧するため、五大貴族や多くの上流貴族が兵を出し、そして多くの損害を被ったことは聞いていた。
損害は甚大であり、出兵した貴族のほとんどはその財産のほとんどを失った。
もちろん、財産を失えば貴族としての運営は厳しくなる。
多くの貴族は、没落の危機に追いやられた。
放っておけば良かったのかもしれないが、俺は上流貴族に沢山の知り合いがいたから、それを見捨てることなんて出来なかった。
だから、我妻家に仕える使用人たちには内緒で、没落寸前だった貴族の連中に金の援助をした。
我妻家の資産は、瞬く間に削られていった。
けど、我妻家が没落することは決してなかった。
なぜなら、俺が援助した貴族の奴らが徐々に勢いを取り戻し、我妻家の後ろ楯となってくれていたからだ。
その事件ののち、我妻家は四大貴族や上流貴族からちゃんと認められた存在となった。