第二十三話 ー安堵ー
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できることならずっと亜莉亜に張り付いていたかったものの、治療の邪魔だと引き剥がされてしまった。
拓斗は騒がしく動き回る四番隊の輪の外で、その様子を見守るしかなかった。
風兎もまた、心配そうに様子を見ている。
拓斗は風兎をちらりと見て、尋ねた。
拓「全く話が見えないんだけど、あんた何者なの?」
風「んん?だいたいさっき言ってた通りだが?まぁ、家のことは極秘も極秘だからな、恐らく俺しか知らないことだろうよ」
助けられたものの、不審であることには変わりないと、拓斗は風兎をじろりと見る。
風兎は居心地悪そうに肩をすくめるが、ふと思い付いたように口を開く。
風「あぁ、これなら分かるんじゃねぇかな?俺は、お嬢の剣の師匠なんだぜ」
誇らしそうにそう言った風兎を見て、拓斗はえぇ、と声を漏らした。
聞いたことがない。
拓「それいつの話?どこで?」
風「あー、お嬢が学校行ってた頃?虚園に単身で修業に来てたとき、偶然見つけてなぁ。ありゃ驚いたぜ」
虚園と修業。
その言葉にハッとする。
聞き覚えがあった。
亜莉亜が霊術院に通っていた頃、魂葬の実習で事故があり、亜莉亜の親友が大怪我を負った。
その件をきっかけに、修業の名目で姿を消してしまった亜莉亜が、虚園で活動していたのを知ったのは、亜莉亜が帰ってきてからだった。
当時は色々なことがあって詳しく話を聞けていなかったが、そんなことがあったのか。
拓「まあ、不審者じゃないことは分かった」
風「不審者」
風兎は若干不満そうである。
風「逆に聞くが、お前はお嬢とどういう関係だ?我妻は貴族の家系だったな」
拓「知らないの?」
風「俺、ほんのさっきまで虚園にいたからなぁ。あっちには情報がまるで来ねえんだよ。やっとのことで、お嬢が大変なことになってるって知って、俺の存在が助けになるならと駆け付けたとこよ。こっちのことは全く分からねぇ」
風兎は肩をすくめて見せた。
仕方ないとため息をつきながら、拓斗は自己紹介をする。
拓「我妻拓斗。亜莉亜が隊長を勤める零番隊の、一応、副隊長をしてる。亜莉亜とは小さい頃に霊王に引き合わされて出会って、それからずっと一緒だったから、幼馴染みでもある。我妻は上流貴族の家で、俺が現当主。あとは」
拓斗は一度、言葉を止め、少しだけ考える素振りを見せた。
拓「あとは、亜莉亜の未来の旦那さん、かな」
打算的な笑顔で、風兎を牽制すれば、風兎が目に見えて動揺しているのが伺えた。
風「大体分かった!えぇと、でもな、そんじょそこらの奴にはやれんって、旦那様が言ってたし、な、え、この場合、俺が見極めなきゃいけねぇのか!?いや、その前に色々片付けなきゃいかんだろ、えぇと──」
拓「そんなに慌てなくても大丈夫だよ、まだ本人に了承もらえてない、し……」
言いながら少しだけ落ち込んでしまう。
積年の想いが実るのは、いつになることやら。
風「……お前も苦労してんだな」
二人の間に沈黙が流れた。
それよりも、聞きたいことがある。
拓斗が真剣な顔を風兎に向けた。
拓「ところで、家のことは亜莉亜は何も知らないよね」
風兎はばつが悪そうに、頷いて目を逸らす。
拓「あんたは全部知ってるの?」
風「あぁ、生まれたときから知ってるさ」
拓「どうして、今まで何も亜莉亜に言わなかった?」
小さい頃からの亜莉亜の苦労を思えば、そうですかと受け入れられる話ではなかった。
拓斗の声に怒りが滲む。
風「お嬢が赤ん坊のとき、お嬢を連れて逃げたのは俺だった。隠すために手放すしかなくて、しばらくはどうしているかさえ知らなかった。」
ポツリと話し出した風兎の声に、拓斗は神妙な顔で耳を傾ける。
風「そこからしばらくして、王族の支配下にあることを知ったが、事実を知らせるほうが酷だと思って、接触を控えた。虚園でのときも、そうだ。知らないほうが幸せだと──」
風兎な伏せていた目を上げた。
風「だが、状況が変わった。このままじゃ、お嬢は王族の玩具だ。俺が知る事実は、お嬢の盾になる。──まぁ、実を言うと、ここまで助けになれなかったことに後ろめたさもある」
拓斗はそう語る風兎の様子を、値踏みするように見ていた。
拓「まぁ、いいや。亜莉亜が目覚めたら、全て話すんだよね」
風「……そうだな、何もかも、話すさ」
風兎は拳を握りしめた。
ふぅんと、拓斗はそっぽを向いた。
亜莉亜のためになるのなら、この男の協力を得るしかない。
でも、できることなら、俺が亜莉亜の一番の力に。
拓斗は騒がしく動き回る四番隊の輪の外で、その様子を見守るしかなかった。
風兎もまた、心配そうに様子を見ている。
拓斗は風兎をちらりと見て、尋ねた。
拓「全く話が見えないんだけど、あんた何者なの?」
風「んん?だいたいさっき言ってた通りだが?まぁ、家のことは極秘も極秘だからな、恐らく俺しか知らないことだろうよ」
助けられたものの、不審であることには変わりないと、拓斗は風兎をじろりと見る。
風兎は居心地悪そうに肩をすくめるが、ふと思い付いたように口を開く。
風「あぁ、これなら分かるんじゃねぇかな?俺は、お嬢の剣の師匠なんだぜ」
誇らしそうにそう言った風兎を見て、拓斗はえぇ、と声を漏らした。
聞いたことがない。
拓「それいつの話?どこで?」
風「あー、お嬢が学校行ってた頃?虚園に単身で修業に来てたとき、偶然見つけてなぁ。ありゃ驚いたぜ」
虚園と修業。
その言葉にハッとする。
聞き覚えがあった。
亜莉亜が霊術院に通っていた頃、魂葬の実習で事故があり、亜莉亜の親友が大怪我を負った。
その件をきっかけに、修業の名目で姿を消してしまった亜莉亜が、虚園で活動していたのを知ったのは、亜莉亜が帰ってきてからだった。
当時は色々なことがあって詳しく話を聞けていなかったが、そんなことがあったのか。
拓「まあ、不審者じゃないことは分かった」
風「不審者」
風兎は若干不満そうである。
風「逆に聞くが、お前はお嬢とどういう関係だ?我妻は貴族の家系だったな」
拓「知らないの?」
風「俺、ほんのさっきまで虚園にいたからなぁ。あっちには情報がまるで来ねえんだよ。やっとのことで、お嬢が大変なことになってるって知って、俺の存在が助けになるならと駆け付けたとこよ。こっちのことは全く分からねぇ」
風兎は肩をすくめて見せた。
仕方ないとため息をつきながら、拓斗は自己紹介をする。
拓「我妻拓斗。亜莉亜が隊長を勤める零番隊の、一応、副隊長をしてる。亜莉亜とは小さい頃に霊王に引き合わされて出会って、それからずっと一緒だったから、幼馴染みでもある。我妻は上流貴族の家で、俺が現当主。あとは」
拓斗は一度、言葉を止め、少しだけ考える素振りを見せた。
拓「あとは、亜莉亜の未来の旦那さん、かな」
打算的な笑顔で、風兎を牽制すれば、風兎が目に見えて動揺しているのが伺えた。
風「大体分かった!えぇと、でもな、そんじょそこらの奴にはやれんって、旦那様が言ってたし、な、え、この場合、俺が見極めなきゃいけねぇのか!?いや、その前に色々片付けなきゃいかんだろ、えぇと──」
拓「そんなに慌てなくても大丈夫だよ、まだ本人に了承もらえてない、し……」
言いながら少しだけ落ち込んでしまう。
積年の想いが実るのは、いつになることやら。
風「……お前も苦労してんだな」
二人の間に沈黙が流れた。
それよりも、聞きたいことがある。
拓斗が真剣な顔を風兎に向けた。
拓「ところで、家のことは亜莉亜は何も知らないよね」
風兎はばつが悪そうに、頷いて目を逸らす。
拓「あんたは全部知ってるの?」
風「あぁ、生まれたときから知ってるさ」
拓「どうして、今まで何も亜莉亜に言わなかった?」
小さい頃からの亜莉亜の苦労を思えば、そうですかと受け入れられる話ではなかった。
拓斗の声に怒りが滲む。
風「お嬢が赤ん坊のとき、お嬢を連れて逃げたのは俺だった。隠すために手放すしかなくて、しばらくはどうしているかさえ知らなかった。」
ポツリと話し出した風兎の声に、拓斗は神妙な顔で耳を傾ける。
風「そこからしばらくして、王族の支配下にあることを知ったが、事実を知らせるほうが酷だと思って、接触を控えた。虚園でのときも、そうだ。知らないほうが幸せだと──」
風兎な伏せていた目を上げた。
風「だが、状況が変わった。このままじゃ、お嬢は王族の玩具だ。俺が知る事実は、お嬢の盾になる。──まぁ、実を言うと、ここまで助けになれなかったことに後ろめたさもある」
拓斗はそう語る風兎の様子を、値踏みするように見ていた。
拓「まぁ、いいや。亜莉亜が目覚めたら、全て話すんだよね」
風「……そうだな、何もかも、話すさ」
風兎は拳を握りしめた。
ふぅんと、拓斗はそっぽを向いた。
亜莉亜のためになるのなら、この男の協力を得るしかない。
でも、できることなら、俺が亜莉亜の一番の力に。