第二十一話 ー差ー
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亜莉亜と初めて会ったのは、一体何年前の事だっただろうか。
あの頃は二人ともまだ小さくて。
何も知らなくて──それで、幸せだった。
我妻家の長男として生まれた俺は、一族の期待を一身に背負い、鍛錬と勉学にひたすら励んでいた。
貴族としての血筋あってか、霊圧の高さは家一番で、かつ、そこらの貴族の人間よりもずっと強かった。
そんなこともあって、俺は王族に……特に霊王に気に入られ、無邪気にもよく話をしに行っていた。
ある日、霊王に「王属特務」の話を聞かされた。
霊王は、自分を護り、そして瀞霊廷を率いることができる、最強の精鋭部隊を作りたいのだと言った。
そして、そこの「副隊長」を俺に任せたいとも──。
「王属特務」の話を聞いて、我妻家の人間は非常に喜んだ。俺も嬉しかった。
しかし、「副隊長」という言葉が出た途端、人々の顔は曇った。
──このように立派な、我妻家の長男を、誰かの下に就かせるというのだろうか。きっとどこか上の貴族の人間だ。貴族の位で上下が決められてしまったのだ。なんと不憫な……。
屋敷の誰もがこのようなことを言っていた。
俺だって、面白くない。
俺だって、悲しい。
だから、幼いながらにも心の中で決めていた。
もし隊長が不甲斐ない奴なら、さっさと殺してしまおう、と。
隊長との顔合わせの日、浮かない顔で、しかし毒気の走るぎらついた目で、俺は待機していた。
どんな奴だろう、そんな事を考えていたら、霊王の声が聞こえた。
俺に入室を促していた。
だから、俺は視線を上げて、一歩ずつ足を進めた。
霊王の間へと続く大きな扉を、王宮の使用人が開く。
少し眩しい光の中、部屋に立ちすくむ影がだんだんと明瞭になる。
何てこった、女の子だ。
頭の中に血が上る。
女の下で働くなんて……男の恥じゃないか。
不機嫌なまま、女の子に近寄る。
隊長だなんて、認めたくない。
女の子は、水色の髪をしていた。
俯いて顔を見せないでいるのは、俺を認めないという姿勢だろうか。
「ねぇ、君が隊長?」
今の気分をそのまま出したかのような、冷たい声が出た。
女の子は俺を無視している。
とことん見下された気がして、腹が立つ。
「…無視?この俺を?」
それでも顔を上げないか。
「隊長だかなんだか知らないけどさぁ…人を無視するとか、何様なわけ?」
まだ女の子は動かない。
「いい加減にしろ!!」
そう叫んで女の子の顔を掴んで、無理やりこっちを向かせた。
そのまま一殴りでもするつもりだった。
しかし、俺は次の行動に移れなかった。
青く、濁りのない、潤んだ瞳。
目が離せなかった。
まるで宝石のように輝く瞳は、どこか儚く、脆く、危うげで。
何故か、一瞬にして敵意が吹っ飛んでしまった。
たった数秒のことなのかもしれないけれど、俺にはその時間は特別で、気が遠くなるほど長く感じられた。
きっと、一目惚れだった。
あの頃は二人ともまだ小さくて。
何も知らなくて──それで、幸せだった。
我妻家の長男として生まれた俺は、一族の期待を一身に背負い、鍛錬と勉学にひたすら励んでいた。
貴族としての血筋あってか、霊圧の高さは家一番で、かつ、そこらの貴族の人間よりもずっと強かった。
そんなこともあって、俺は王族に……特に霊王に気に入られ、無邪気にもよく話をしに行っていた。
ある日、霊王に「王属特務」の話を聞かされた。
霊王は、自分を護り、そして瀞霊廷を率いることができる、最強の精鋭部隊を作りたいのだと言った。
そして、そこの「副隊長」を俺に任せたいとも──。
「王属特務」の話を聞いて、我妻家の人間は非常に喜んだ。俺も嬉しかった。
しかし、「副隊長」という言葉が出た途端、人々の顔は曇った。
──このように立派な、我妻家の長男を、誰かの下に就かせるというのだろうか。きっとどこか上の貴族の人間だ。貴族の位で上下が決められてしまったのだ。なんと不憫な……。
屋敷の誰もがこのようなことを言っていた。
俺だって、面白くない。
俺だって、悲しい。
だから、幼いながらにも心の中で決めていた。
もし隊長が不甲斐ない奴なら、さっさと殺してしまおう、と。
隊長との顔合わせの日、浮かない顔で、しかし毒気の走るぎらついた目で、俺は待機していた。
どんな奴だろう、そんな事を考えていたら、霊王の声が聞こえた。
俺に入室を促していた。
だから、俺は視線を上げて、一歩ずつ足を進めた。
霊王の間へと続く大きな扉を、王宮の使用人が開く。
少し眩しい光の中、部屋に立ちすくむ影がだんだんと明瞭になる。
何てこった、女の子だ。
頭の中に血が上る。
女の下で働くなんて……男の恥じゃないか。
不機嫌なまま、女の子に近寄る。
隊長だなんて、認めたくない。
女の子は、水色の髪をしていた。
俯いて顔を見せないでいるのは、俺を認めないという姿勢だろうか。
「ねぇ、君が隊長?」
今の気分をそのまま出したかのような、冷たい声が出た。
女の子は俺を無視している。
とことん見下された気がして、腹が立つ。
「…無視?この俺を?」
それでも顔を上げないか。
「隊長だかなんだか知らないけどさぁ…人を無視するとか、何様なわけ?」
まだ女の子は動かない。
「いい加減にしろ!!」
そう叫んで女の子の顔を掴んで、無理やりこっちを向かせた。
そのまま一殴りでもするつもりだった。
しかし、俺は次の行動に移れなかった。
青く、濁りのない、潤んだ瞳。
目が離せなかった。
まるで宝石のように輝く瞳は、どこか儚く、脆く、危うげで。
何故か、一瞬にして敵意が吹っ飛んでしまった。
たった数秒のことなのかもしれないけれど、俺にはその時間は特別で、気が遠くなるほど長く感じられた。
きっと、一目惚れだった。