第二十話 ー謎解きー
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『!?』
しまったと思うと同時に、全てを理解する。
血が流れる右手は、痛みも温度も、何も感じない。
目の前に迫る刃と、無防備な自分。
しかし、負けるわけにはいかないのだ。
──帰ると、護ると、約束したのだから。
『このくそッ……!』
右手から滑り落ちた残魄刀が地面に落ちてしまう前に、左手で柄を握り留める。
逆手で握った残魄刀で、間一髪攻撃を受け流す。
顔すれすれを敵の刀が通り、頬から一筋の血が滑り落ちた。
背の高い破面が、僅かに顔を歪める。
その隙を見逃さず、残魄刀を手の上で転がし順手に持ちかえる。
照準を破面の首元に定め、優雅な動作で残魄刀を振りかざす──
『悪いな、むごいやり方をしてしまって。』
左手に握られた刀を器用に鞘に仕舞い、破面だった“もの”を見て、少しだけ哀れむ。
先ほどまで激しく戦っていた場所は、首を狩られた二つの死体と、二つの首、それと彼らの血で溢れていた。
向き直れば、瑚絽音と七緒が呆然と立ちすくんでいる。
『見るな。そして、この事を引きずるな。私たちが死神である限り、覚悟しなければならない事だ。』
そう言って二人の肩を軽く叩く。
瑚絽音が、涙ぐむ目をぎゅっと閉じ、いつものように勢い良く頷いた。
七緒はというと、厳しい意志のある目で私を見ている。
七「覚悟はできてます。早く、次の行動に移しましょう。……その前に、神影隊長はお体の手当が先ですが。」
こちらは心配いらなかったようだ。
『じゃあ……止血だけ頼む。』
瑚絽音がピクリと反応した。
瑚「ちゃんと治療しなきゃだめなのです!」
必死に訴える、その姿がいつかと重なって見える。
懐かしいな。
『いいんだ、瑚絽音。今回は、深すぎる。完全に治しきるには、その辺の鬼道じゃ足りない。いくら伊勢でもな。──それならいっそ、感覚がないままの方が好都合だ。痛みが無い分、
無理がまかり通る。』
瑚「でも……!」
『いいんだ。』
瑚「瑚絽音は耐えられないのです!……亜莉亜がそこまで辛い思いをしてまで、死神は助けないといけないものですかッ!?そこまで犠牲にして、そんなに怪我して、意味なんて!」
『あるんだな、それが。』
軽く笑って、応じる。
瑚「でも……!」
『お前は何も気にしなくていい。私のことなら、何も心配いらないから。私は、私の信念に基づいて行動したいんだ。』
柔らかく微笑む亜莉亜に、瑚絽音は何も言えなかった。
傷の応急処置を終えた、亜莉亜たちは辺りの様子を伺いながら慎重に外に出た。
『何て、こった……』
言葉を失う。
激しく煮えたぎった霊圧が、殺すことに戸惑いのない惨忍な霊圧が──
『拓斗……ッ!?』
拓斗の霊圧と対峙している。
何かに遮られてはいたが、その霊圧は確かに伝わってきている。
瑚「きゃっ!」
七「何て……霊圧!」
一際大きな霊圧の衝撃が三人を襲う。
気をつけていなければ、吹き飛ばされてしまいそうだ。
亜莉亜は長い髪の毛を靡かせながら、霊圧に意識を集中させている。
その髪は、まだ霊圧制御かつ変装の指輪を取っていないことから、艶のある黒のままである。
『──卑怯な手を。』
吹き荒れる霊圧の衝撃の中、亜莉亜はぽつりと呟いた。
その様子を、瑚絽音は不思議そうに見ていた。
ぎゅっと握られた亜莉亜の拳は、小刻みに震えている。
瑚絽音は、一瞬だけ辛そうに顔を歪め、亜莉亜の拳を自分の手でやさしく包み込んだ。
はっとして、亜莉亜が振り返る。
安堵したように僅かに表情が緩まるが、それは再び訪れた霊圧の衝撃にすぐ消されてしまった。
『瑚絽音、七緒。』
一人ずつ確認するかのように目を合わせながら、その名を呼ぶ。
漂う緊張感に、瑚絽音は亜莉亜の手を離し、一歩下がって七緒と肩を並べた。
『頼みがある。』
その言葉の後に続いた内容は、到底二人には理解しきれないものだった。
しかし、二人とも亜莉亜の頼みを断ろうとは思わなかった。
亜莉亜の真剣な目に、断ることはできなかったのだ。
──そうして、瑚絽音と七緒を見送った後、亜莉亜は一人風に吹かれながら立っていた。
厳しい表情で、右腕に巻かれた包帯をきつく結びなおす。
包帯からは血が滲み、時折痛みに眉を寄せる。
片手と口を使って包帯を頑丈に結んだ後、亜莉亜は左手を自分の胸に当てて深呼吸した。
これから、何があっても、意思を揺らがせないように。
何があっても、仲間のために命をかけるように──。
手を下ろし、真っ直ぐに前を見て、胸を張る。
さあ、行こうか。
愛する仲間たちの元に。
そして──もう一人の私の元に。
しまったと思うと同時に、全てを理解する。
血が流れる右手は、痛みも温度も、何も感じない。
目の前に迫る刃と、無防備な自分。
しかし、負けるわけにはいかないのだ。
──帰ると、護ると、約束したのだから。
『このくそッ……!』
右手から滑り落ちた残魄刀が地面に落ちてしまう前に、左手で柄を握り留める。
逆手で握った残魄刀で、間一髪攻撃を受け流す。
顔すれすれを敵の刀が通り、頬から一筋の血が滑り落ちた。
背の高い破面が、僅かに顔を歪める。
その隙を見逃さず、残魄刀を手の上で転がし順手に持ちかえる。
照準を破面の首元に定め、優雅な動作で残魄刀を振りかざす──
『悪いな、むごいやり方をしてしまって。』
左手に握られた刀を器用に鞘に仕舞い、破面だった“もの”を見て、少しだけ哀れむ。
先ほどまで激しく戦っていた場所は、首を狩られた二つの死体と、二つの首、それと彼らの血で溢れていた。
向き直れば、瑚絽音と七緒が呆然と立ちすくんでいる。
『見るな。そして、この事を引きずるな。私たちが死神である限り、覚悟しなければならない事だ。』
そう言って二人の肩を軽く叩く。
瑚絽音が、涙ぐむ目をぎゅっと閉じ、いつものように勢い良く頷いた。
七緒はというと、厳しい意志のある目で私を見ている。
七「覚悟はできてます。早く、次の行動に移しましょう。……その前に、神影隊長はお体の手当が先ですが。」
こちらは心配いらなかったようだ。
『じゃあ……止血だけ頼む。』
瑚絽音がピクリと反応した。
瑚「ちゃんと治療しなきゃだめなのです!」
必死に訴える、その姿がいつかと重なって見える。
懐かしいな。
『いいんだ、瑚絽音。今回は、深すぎる。完全に治しきるには、その辺の鬼道じゃ足りない。いくら伊勢でもな。──それならいっそ、感覚がないままの方が好都合だ。痛みが無い分、
無理がまかり通る。』
瑚「でも……!」
『いいんだ。』
瑚「瑚絽音は耐えられないのです!……亜莉亜がそこまで辛い思いをしてまで、死神は助けないといけないものですかッ!?そこまで犠牲にして、そんなに怪我して、意味なんて!」
『あるんだな、それが。』
軽く笑って、応じる。
瑚「でも……!」
『お前は何も気にしなくていい。私のことなら、何も心配いらないから。私は、私の信念に基づいて行動したいんだ。』
柔らかく微笑む亜莉亜に、瑚絽音は何も言えなかった。
傷の応急処置を終えた、亜莉亜たちは辺りの様子を伺いながら慎重に外に出た。
『何て、こった……』
言葉を失う。
激しく煮えたぎった霊圧が、殺すことに戸惑いのない惨忍な霊圧が──
『拓斗……ッ!?』
拓斗の霊圧と対峙している。
何かに遮られてはいたが、その霊圧は確かに伝わってきている。
瑚「きゃっ!」
七「何て……霊圧!」
一際大きな霊圧の衝撃が三人を襲う。
気をつけていなければ、吹き飛ばされてしまいそうだ。
亜莉亜は長い髪の毛を靡かせながら、霊圧に意識を集中させている。
その髪は、まだ霊圧制御かつ変装の指輪を取っていないことから、艶のある黒のままである。
『──卑怯な手を。』
吹き荒れる霊圧の衝撃の中、亜莉亜はぽつりと呟いた。
その様子を、瑚絽音は不思議そうに見ていた。
ぎゅっと握られた亜莉亜の拳は、小刻みに震えている。
瑚絽音は、一瞬だけ辛そうに顔を歪め、亜莉亜の拳を自分の手でやさしく包み込んだ。
はっとして、亜莉亜が振り返る。
安堵したように僅かに表情が緩まるが、それは再び訪れた霊圧の衝撃にすぐ消されてしまった。
『瑚絽音、七緒。』
一人ずつ確認するかのように目を合わせながら、その名を呼ぶ。
漂う緊張感に、瑚絽音は亜莉亜の手を離し、一歩下がって七緒と肩を並べた。
『頼みがある。』
その言葉の後に続いた内容は、到底二人には理解しきれないものだった。
しかし、二人とも亜莉亜の頼みを断ろうとは思わなかった。
亜莉亜の真剣な目に、断ることはできなかったのだ。
──そうして、瑚絽音と七緒を見送った後、亜莉亜は一人風に吹かれながら立っていた。
厳しい表情で、右腕に巻かれた包帯をきつく結びなおす。
包帯からは血が滲み、時折痛みに眉を寄せる。
片手と口を使って包帯を頑丈に結んだ後、亜莉亜は左手を自分の胸に当てて深呼吸した。
これから、何があっても、意思を揺らがせないように。
何があっても、仲間のために命をかけるように──。
手を下ろし、真っ直ぐに前を見て、胸を張る。
さあ、行こうか。
愛する仲間たちの元に。
そして──もう一人の私の元に。