第二十話 ー謎解きー
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「何て、何てことだ……」
子供の声。
それで、忘れかけていた破面の存在を思い出した。
『そうだ、破面。お前らの考えは正しかった。確かに、私は不確定要素。しかも、死神側の人間で──恐らく、死神の中で最も強い。ただ、誤算だったな。あんたら2人じゃ、時間の問題だ。』
少年の破面が、何かを言おうとして、悔しそうに口をつぐむ。
それを横目に、そっと手先を指輪に滑らせる。
霊圧を解放する小さなボタンを探り、静かに押す。
一回。第一段階、霊圧を抑えた隊長格。
二回。第二段階、開放状態の隊長格。
三回。第三段階、零番隊の席官並み。
そして、もう一度──
第四段階、神影亜莉亜として戦闘時の霊圧。
『──時間はかけたくない。』
ぼそりと呟き、ぱっと開いた右手に目をやる。
握り、開き、霊圧が溢れる感覚を身体に思い出させる。
微かな痺れと、じわりと広がる何かが、かつての感覚を呼び覚ましている。
そう、これが、“私”だった。
闇鬼はここにない。
しかし、確かに力があるのだ。
新鮮で鮮やかな力が──
『血を、求めている。』
無意識に口角が上がるのを感じた。
私には、力がある。
この身体の中で生きている、力だ。
あぁ、この力で何をしようか。
そんなの、答えはとっくに決まっている。
私は──
『──今度こそ、大切な人たちを護る。』
二度と、姫香のような存在を作らないために。
大切な人を笑顔にするため。
『さぁ──』
視線を上げて、数秒だけ目を閉じて、集中を高める。
『やろうか。』
瞳に破面が映ったとき、もうそこに温かい笑顔は無い。
ここにいるのは、刀を握った、一人の戦士だ。
「予想外だ。」
背の高い破面が呟く。
「しかし、想定内だ。我々は個体としての能力が高い上に、完全体である。簡単に死に至ることは、まず、ない。それに、こちらは二人。恐らくそちらは一人。時間稼ぎには十分だろう。」
「……なる程。そう、そうか!」
少年の破面が表情を膨らませる。
そして、こちらを見た。
『話が長いな。また時間稼ぎか?』
「違うよ、おにーさん、いや、神影亜莉亜。あんたは外の死神たちを助けられない。」
『……何故?』
残魄刀をするりと抜く。
「それは、あんたが他の二人を戦わせないからだよ。」
『……。』
「こっちは、大虚の破面。ボクたちと、そっちの二人を戦わせれば、少なくとも、どちらかは怪我するか、最悪死んじゃうもん。どう?合ってるでよね!」
確かに、間違ってはいない。
瑚絽音はともかく、伊勢は大虚破面に苦戦するだろう。
言わば、京楽からの預かりものだ。
いくら何でも、傷をつけて返すわけにはいかない。
瑚絽音にだって、怪我なんかさせたくない。
そもそも、瑚絽音には経験がない。
つまり、戦闘形式が単調だということ。
それを前回敵に見せてしまっている以上、奴の前に出すのは危険だ。
だけど……
『ククッ──残念だ。あんたらは、私を誰だと思ってるんだ?』
破面たちが表情を強ばらせた。
『あんたら二人の相手なんて、私一人で十分だ。それに、私は、伊勢と瑚絽音を“戦わせない”んだ。二人には、してもらいたい別の事がある。恐らく、この争いを収めるために最も重要な事だ。──どうだ、まだ余裕か?』
破面たちの方に視線を向ければ、まだまだ余裕だというように、表情を崩さない。
あくまで“余裕”らしい。
刹那、少年の方が顔をくしゃりと歪めた。
「馬鹿にするな!ボクは教主様に作られた、誇りのある破面!侮辱したことを後悔させてやる!」
少年の破面が飛び込んでくる。
伊勢と瑚絽音が小さく声を上げた。
けれど、私には関係ない。
霊圧を解放した今の私にとっては、目を瞑っても奴の位置が分かる。
キィン!
「くうッ!」
残魄刀で受け止めてやれば、その衝撃で破面が声を上げた。
対して、私はびくとも動かない。
この程度なら、何の問題もない──
素早く真一文字に切り込む。
「どけ。」
瞬時に、背の高い破面が割り込む。
『へえ、協力できるんだな、お前ら。』
反撃を避け、一旦数歩下がる。
残魄刀を右手に握り直し、顔を上げてやつらを見れば、二人そろってこちらに注目している。
「ふん、たまたまだ。」
背の高い破面が落ち着いた声で答えた。
少年の方よりも、こちらの方が手強いかもしれないと、ふと考える 。
しかし、とにかく、時間がない。
倒さなければ。
早く外の状況が知りたい。
その焦りが、頭の中を熱くしていることに、私は気づいていなかった。
『来いよ。』
背の高い破面が少年を見て、少年が小さく頷く。
何か作戦でも立てているのか。
「う、うわぁぁあああ!」
少年の破面が全力で私を斬りにかかる。
かわし、そして刀を振るう。
手応えと共に、ほんの数滴だが血が舞った。
「ッまだまだ──」
今度は受け止め、刀を滑らせて衝撃を受け流す。
瞬歩を活用しながら、翻弄してやれば、少年の破面は明らかに動揺する。
だが、それでもまだ打ち込んでくる。
恐らく、全力。
こちらも少し集中しなければ、手傷を負ってしまいそうなほどだ。
『やるじゃないか。だがな、終わらせてもらうぞ。』
右腕に力をこめ、重たく打ち込む。
予想通り破面がよろめいて、今なら狩れると意識が少年のみに集中した。
刹那、突き刺そうと振り上げた右手の感覚が、消えた。
子供の声。
それで、忘れかけていた破面の存在を思い出した。
『そうだ、破面。お前らの考えは正しかった。確かに、私は不確定要素。しかも、死神側の人間で──恐らく、死神の中で最も強い。ただ、誤算だったな。あんたら2人じゃ、時間の問題だ。』
少年の破面が、何かを言おうとして、悔しそうに口をつぐむ。
それを横目に、そっと手先を指輪に滑らせる。
霊圧を解放する小さなボタンを探り、静かに押す。
一回。第一段階、霊圧を抑えた隊長格。
二回。第二段階、開放状態の隊長格。
三回。第三段階、零番隊の席官並み。
そして、もう一度──
第四段階、神影亜莉亜として戦闘時の霊圧。
『──時間はかけたくない。』
ぼそりと呟き、ぱっと開いた右手に目をやる。
握り、開き、霊圧が溢れる感覚を身体に思い出させる。
微かな痺れと、じわりと広がる何かが、かつての感覚を呼び覚ましている。
そう、これが、“私”だった。
闇鬼はここにない。
しかし、確かに力があるのだ。
新鮮で鮮やかな力が──
『血を、求めている。』
無意識に口角が上がるのを感じた。
私には、力がある。
この身体の中で生きている、力だ。
あぁ、この力で何をしようか。
そんなの、答えはとっくに決まっている。
私は──
『──今度こそ、大切な人たちを護る。』
二度と、姫香のような存在を作らないために。
大切な人を笑顔にするため。
『さぁ──』
視線を上げて、数秒だけ目を閉じて、集中を高める。
『やろうか。』
瞳に破面が映ったとき、もうそこに温かい笑顔は無い。
ここにいるのは、刀を握った、一人の戦士だ。
「予想外だ。」
背の高い破面が呟く。
「しかし、想定内だ。我々は個体としての能力が高い上に、完全体である。簡単に死に至ることは、まず、ない。それに、こちらは二人。恐らくそちらは一人。時間稼ぎには十分だろう。」
「……なる程。そう、そうか!」
少年の破面が表情を膨らませる。
そして、こちらを見た。
『話が長いな。また時間稼ぎか?』
「違うよ、おにーさん、いや、神影亜莉亜。あんたは外の死神たちを助けられない。」
『……何故?』
残魄刀をするりと抜く。
「それは、あんたが他の二人を戦わせないからだよ。」
『……。』
「こっちは、大虚の破面。ボクたちと、そっちの二人を戦わせれば、少なくとも、どちらかは怪我するか、最悪死んじゃうもん。どう?合ってるでよね!」
確かに、間違ってはいない。
瑚絽音はともかく、伊勢は大虚破面に苦戦するだろう。
言わば、京楽からの預かりものだ。
いくら何でも、傷をつけて返すわけにはいかない。
瑚絽音にだって、怪我なんかさせたくない。
そもそも、瑚絽音には経験がない。
つまり、戦闘形式が単調だということ。
それを前回敵に見せてしまっている以上、奴の前に出すのは危険だ。
だけど……
『ククッ──残念だ。あんたらは、私を誰だと思ってるんだ?』
破面たちが表情を強ばらせた。
『あんたら二人の相手なんて、私一人で十分だ。それに、私は、伊勢と瑚絽音を“戦わせない”んだ。二人には、してもらいたい別の事がある。恐らく、この争いを収めるために最も重要な事だ。──どうだ、まだ余裕か?』
破面たちの方に視線を向ければ、まだまだ余裕だというように、表情を崩さない。
あくまで“余裕”らしい。
刹那、少年の方が顔をくしゃりと歪めた。
「馬鹿にするな!ボクは教主様に作られた、誇りのある破面!侮辱したことを後悔させてやる!」
少年の破面が飛び込んでくる。
伊勢と瑚絽音が小さく声を上げた。
けれど、私には関係ない。
霊圧を解放した今の私にとっては、目を瞑っても奴の位置が分かる。
キィン!
「くうッ!」
残魄刀で受け止めてやれば、その衝撃で破面が声を上げた。
対して、私はびくとも動かない。
この程度なら、何の問題もない──
素早く真一文字に切り込む。
「どけ。」
瞬時に、背の高い破面が割り込む。
『へえ、協力できるんだな、お前ら。』
反撃を避け、一旦数歩下がる。
残魄刀を右手に握り直し、顔を上げてやつらを見れば、二人そろってこちらに注目している。
「ふん、たまたまだ。」
背の高い破面が落ち着いた声で答えた。
少年の方よりも、こちらの方が手強いかもしれないと、ふと考える 。
しかし、とにかく、時間がない。
倒さなければ。
早く外の状況が知りたい。
その焦りが、頭の中を熱くしていることに、私は気づいていなかった。
『来いよ。』
背の高い破面が少年を見て、少年が小さく頷く。
何か作戦でも立てているのか。
「う、うわぁぁあああ!」
少年の破面が全力で私を斬りにかかる。
かわし、そして刀を振るう。
手応えと共に、ほんの数滴だが血が舞った。
「ッまだまだ──」
今度は受け止め、刀を滑らせて衝撃を受け流す。
瞬歩を活用しながら、翻弄してやれば、少年の破面は明らかに動揺する。
だが、それでもまだ打ち込んでくる。
恐らく、全力。
こちらも少し集中しなければ、手傷を負ってしまいそうなほどだ。
『やるじゃないか。だがな、終わらせてもらうぞ。』
右腕に力をこめ、重たく打ち込む。
予想通り破面がよろめいて、今なら狩れると意識が少年のみに集中した。
刹那、突き刺そうと振り上げた右手の感覚が、消えた。