杏「へっ？あ、すみません。あまりに衝撃的で……魂が抜けちゃってました。」
拓「ははっ。俺も、初めて聞いたときは本当にびっくりしたよ。」
杏「やっぱり隊長って、努力家なんですね。」
杏樹はしきりに頷いている。
拓「俺としては、運動音痴な亜莉亜も見てみたかったけどなぁ。あ、話がそれちゃったね。じゃ、俺しばらく隊首室にいるから。よろしくね。」
杏樹が返事をしたことを確認し、拓斗はゆっくりと隊首室へ向かう。

カチャッ
隊首室のドアノブを回す。
亜莉亜を起こさないようにと、拓斗は静かに部屋に入った。
拓「亜莉亜～？」
小さな声で呼んでみる。
だが返事はない。
ふとソファーを覗き込んでみると──
『……』
小さく寝息をたてながら、亜莉亜が熟睡していた。
拓「全く、無防備すぎるでしょ。」
隊首室なんて、いつ誰が入ってくるか分からないのだ。
拓「それに、こんなところで寝ちゃうと風邪ひくよ。」
拓斗は、仮眠室から取ってきた毛布を、そっと亜莉亜にかけた。
それでも亜莉亜は全く反応しない。
…こうやって亜莉亜の寝顔眺められるのも、副隊長だからこその特権だよね。
起きてるときはあんなにキリッとしてるのに、寝ているとちょっと幼い表情してる。
その顔を見ていると、ものすごく微笑ましい気分になってくる。
拓「ん？」
いくつかの霊圧が近づいてきている。
一人は杏樹で…あれ？京楽隊長もいる。
しばらくすると、隊首室のドアが控えめに叩かれた。
カチャ…
杏「副隊長、お客様いらっしゃってますけど、どうします？」
拓「京楽隊長を追い返すわけにはいかないでしょ？入ってもらって。」
杏「分かりました。…どうぞ」
杏樹の後ろから、京楽や七緒と、一人の隊員が顔を見せた。
京「やぁ拓斗くん、久しぶりじゃない。ちょっと亜莉亜ちゃんに話があるんだけど、来てるかい？」