そっとドアの鍵に手をかける。
カチャッ
ドアをパッと開くが、そこには誰もいない。
でもあたしは、誰かの気配を背中に感じた。
湖「全く…誰かと思えばあんただったのね。焦って損したわ。」
そう言って振り向くと、黒マントの男が立っていた。
辺りには異様な空気が漂っている。
「久しぶりですね。レヴィアタン。」
逆光のせいで男の顔は見えない。
湖「懐かしい呼び方ね、ルシファー。でもその名前は好きじゃないから止めてくれるかしら？──あたしに何か用？」
ルシ「正確には、"あの方"が貴女に用があるのです。レヴィアタン、共に来なさい。」
湖「な！？──で、でも、あたしにはまだやりたいことが…」
ルシ「関係ありません。"あの方"が欲しているのです。貴女の欲は"あの方"が叶えてくださるでしょう。それに、貴女に拒否権などはない。」
ルシファーの高圧的な態度に、湖娘は渋々と頷いた。
湖「分かったわよ。でも、あんたに偉そうな顔をされる筋合いはないわ。」
湖娘は鋭い目でルシファーを見上げる。
ルシ「仕方ありません。私が一番偉いのは事実です。第一、私は"あの方"に絶大なる信頼をおかれている。」
湖「違うわ。"あの方"が信頼しているのはあんたじゃない。あんたの能力よ。」
ルシ「私に喧嘩を売っているのですか？レヴィアタン。」
突然ルシファーの声色が暗くなり、湖娘は息をのむ。
湖「…」
ルシ「分かれば良いのです。では行きましょう。支度が終わり次第、外に出てきなさい。」
ルシファーはそう言うと、湖娘の部屋から出ていった。
湖「…ッあいつ！！」
カシャアァン
湖娘は先程まで自分が使っていたチェス盤と駒を、床に投げつけた。
自分より上に立つものは絶対に許さない。
許したくないのに…！
あいつに従わなければならないなんて…酷い…！




あたしの中の嫉妬が暴走する。