サワサワ……
不意に辺りの木が揺れた。
亜莉亜は闇鬼を鞘から抜く。
「貴女が神影亜莉亜？…へぇ、なかなか良い女じゃない。」
どこからともなく響き渡る女の声。
凛としながらも、色気を含んだ声色…
『姿を見せろ』
「そんなに私の姿が見たい？仕方ないわね。」
ブワッ
『…ッ』
突然強い風が吹き乱れ、亜莉亜は目を細める。
ふと風が止み、目を開けると、前方に人間らしき影が見えた。
しだいに、舞っていた砂が地面に落ち着き、視界が晴れる。
「残念でしょう？貴女よりも良い女だから。」
『それは別にどうでもいいが──それがお前の姿か』
亜莉亜の目に映る女は、カールさせた、艶のある黒髪をなびかせながら、亜莉亜を見ていた。
「私はアスモデウス。ちゃんと覚えてね。」
黒髪に映える紅い瞳が亜莉亜の蒼い瞳を射抜く。
『奴等の仲間か？』
ア「マンモンとルシファーの事かしら？それともレヴィアタン？」
"レヴィアタン"？
初めて聞く名前に、亜莉亜は眉を寄せる。
『…レヴィアタンとは誰だ。』
ア「あら、知らなかったの？…それじゃあまだ言えないわね。」
『お前らの目的は何だ。』
亜莉亜は斬魄刀にの先をアスモデウスに向けた。
『返答次第では、生きて返さない。』
ア「やだ、物騒ね。…私たちの目的？そう、ね…言葉には出来ないわ。」
『それは、私には教えられないという意味か。』
ア「違う。」
フッと亜莉亜の視界からアスモデウスが消えた。
ア「本能だから、仕方ないの」
『ッ！？』
突然、息がかかるほど近くでアスモデウスの声が響き、亜莉亜は目を見開く。
そのすぐ後に辺りに響いたのは、金属同士がぶつかり合うようなかん高い音だった。
ザッ
亜莉亜は、アスモデウスの刃を払うと、後ろに下がった。