拓斗の意識が戻った。
本当に良かった…。
一番隊へ向かいながら、改めてそう思った。
アイツが目覚めなかったとしたら、私は、どうしていたか分からない。
直接言ったことは無いが、やはり拓斗が大切なのだ。
ふと亜莉亜の足が止まる。
『……』
そうだ。
山じいより先に、報告をしなければならないところがあるんだった。
それは、浦原商店だ。
その訳は、ちょうど５日前にあった。

「申し上げます！」
突然飛び込んできた声に、亜莉亜は何事かと振り向く。
そこには、隠密機動の隊員の姿があった。
現世にまで報告に出向くとは……それほど火急の事態が起こったというのだろうか。
隊「先ほど、零番隊の執務室にて、我妻拓斗副隊長が重傷を負い、倒れているのが確認されました。」
亜莉亜は絶句する。
『……容、態は』
かろうじて絞り出した声。
あり得ない。
アイツがそんなに簡単にやられるわけがない。
いったい誰が？
拓斗は大丈夫なのか？
そういった言葉が、亜莉亜の思考を埋め尽くす。
隊「左肩を真上から深く斬られています。そのため、出血が酷く──現在、卯ノ花隊長が手当てをされています。」
『！…そんな』
命に関わる程の怪我だ…
その事を理解した亜莉亜。
もうパニックだ。
自分は何をしたらいい。
何をしたら、拓斗を助けられる。
冬「神影。」
『！…日番谷』
亜莉亜が動揺しているのを見計らった冬獅郎が、亜莉亜に声をかけた。
亜莉亜ははっとしたように冬獅郎に視線を向ける。
冬「行ってやれ。」
思いがけない言葉をかけられ、亜莉亜は固まる。
『え…』
冬「我妻んとこに行ってやれ。アイツは、お前にそばにいて欲しいと思ってるはずだ。」
『だが…』
私が向こうに行っている間に、現世に奴等が出たら…
冬「心配すんな。もしあいつらが出ても、俺たちだけでどうにかする。」
『……』