拓「亜莉亜ー？」
拓斗は、二人しかいなくなった病室で、優しく亜莉亜に話しかけた。
『…心配、させないでくれ』
か細く震えた声で亜莉亜は答える。
懐かしいな、この感じ。
不謹慎ながらそう懐かしんでしまう。
まだ俺たちが子供だった頃みたい。
あのときはまだ、俺たちは弱くて、未熟だったよね。
俺はやんちゃで利かん坊で。
亜莉亜は意地っ張りで消極的で…それで泣き虫だった。
そのときと比べたら、俺たちは強くなった。
戦闘に関してもだけど、意志も強くなった。
だけど、本当はあのころと何も変わって無いんだ。
いや、あのころよりも弱くなったのかもしれない。
それは、”大切なもの”ができてしまったから。
その”大切なもの”を失うのが、俺は怖い。
亜莉亜もそうなのかな？
心配かけてごめんね。
心配してくれてありがとう。
その二つの思いがこみ上げた。
拓「ありがとう。」
俺は、この言葉を選んだ。
『……』
亜莉亜の表情がフッと緩む。

拓「何かびっくりしたなぁ。」
亜莉亜の様子が落ち着いたのを見計らって、拓斗が言った。
『何がだ？』
亜莉亜は自分の行動を振り返る。
確かに、拓斗が重症と聞いて、多少……取り乱しはしたが、多少だ。
拓「俺のために、現世から飛んできてくれた。」
『それは！……当然だ』
拓「自分の怪我を放っておいて…ね。」
亜莉亜は表情を一気に硬くする。
拓「胸元から包帯が見えてるじゃん。」
『…見なかったことにしろ。』
拓「それはムリ。ちゃんと完治するまで、絶対安静だから。」
『それはお前だ！肩がもがれそうになってて言えるセリフか』
拓「それは……もがれてないからセーフ。」
『絶対安静、だ。隊長命令、で。』
”絶対安静”と”隊長命令”を強調する。
拓斗は苦笑した。