深い深い闇の中。
ここは何処？
俺は何をしているんだろう。
ふと見上げれば、少し遠くにぼやけた光の塊があった。
それはゆっくりと何かを形成してゆく。
やがて光は、人の形になった。
長く綺麗な髪を漂わせる、女性の姿。
その人に触れたくて、俺は必死に手をのばす。
だけど、俺の手はその光に届かない。
後姿しか見せてくれないけど、その背中、その華奢な肩…俺は知ってる。
それは俺の大切な大切な…
あぁ、駄目だ。
俺はこんなところで時間を潰している訳にはいかない。
彼女の傍にいるって決めたのに。
彼女を支えるって決めたのに。
…行かなくちゃ。

もう、起きなきゃ。　

ぼんやりとした視界が、しだいにはっきりとしてくる。
俺は…生きてる。
今この目に映る景色…それは嘘じゃないみたいだ。
ゆっくりと周りを見てみる。
白を基調に、整理整頓された部屋。
俺の腕に繋がれたチューブ。
それらは、ここが四番隊の病室であることを象徴していた。
拓「？」
拓斗は、誰かの霊圧が自分のすぐそばにあることに気がついた。
右手で体を支え、少し起き上がってみる。
拓「！…亜莉亜。」
拓斗は目を丸くする。
現世に出向いていたはずの亜莉亜が、すぐそばにいる。
しかも、拓斗のいるベッドの横に顔を伏せて寝ているのだ。
流石の拓斗でも驚いてしまう。
拓「…俺って、こんなに愛されてたっけ？」
思わず呟いた。
卯「あなたが重症を負ったと聞いて、すぐにこちらに戻ってきたのですよ。」
ふいに卯ノ花の声が病室に響く。