ふらつく亜莉亜の元に、冬獅郎が駆け寄る。
冬「おい、大丈夫か！？」
『このくらい、なんとも無い』
そんな言葉とは裏腹に、亜莉亜の顔には苦痛がにじみ出ている。
「ルシファー！何勝手に俺の邪魔してんだよ！！」
最初からいた方の男が声を荒げる。
ルシ「マンモン、口を慎みなさい。あの女こそが、我らの標的、王属特務零番隊隊長　神影亜莉亜。貴方一人の手に負えるような相手ではありません。」
もう一方の黒マントの敵が答える。
声からして、性別は男であるようだ。
マ「何だと！？俺を侮辱すんのかてめぇ！」
ルシ「第一、私の助けが無ければ、先ほどので貴方はやられていたでしょう。」
マ「だけど！」
ルシ「お黙りなさい。私は、貴方のような者と話をしに来たのではないのです。」
マ「馬鹿にしやがって。」
マンモンと呼ばれた男は、いかにも不機嫌だというような声を放ち、亜莉亜たちに背を向けた。
ルシ「これだからマンモンは困るのです。──さて、神影亜莉亜さん。」
『……』
亜莉亜とルシファーの視線がぶつかる。
ルシファーの目は、深く暗い黒色をしていた。
ルシ「あの子はどこへ隠したのですか？…お分かりでしょう。叉夜のことです。」
挑発的な声色でルシファーは尋ねる。
『……何のことだ』
ルシ「とぼけても無駄です。早く叉夜の居場所を教えなさい。」
『教えろと言われて、素直に教えるほど純粋じゃないんでな。』
亜莉亜は口角を上げながら答えた。
『何故叉夜を探す。』
ルシ「教えませんよ。まあ、貴方達が馬鹿でないのなら、そのうち分かることになるでしょうが。」
『……』
ルシ「それではマンモン、帰りましょうか。この死神たちは数が多いだけで、知能は低いようだ。」
龍「んだと！？」
『龍、やめとけ。余計に馬鹿に見える。』
龍「…ぇ」
亜莉亜の言葉は、龍の心にしっかりと突き刺さった。
ルシ「残念です。もしここで叉夜の居場所を吐いたのであれば、あなたは苦しい思いをせずに済んだのに。」
『！…どういう意味だ』
シュッ…
マンモンとルシファー…その二人は、静かに消えていった。