亜莉亜は首を振る。
喜「本当に何もですか？」
『……。』
喜「では、目覚めたときに持っていたものは何かありませんか？」
亜莉亜の視線が宙を漂う。
『持っていたもの…何も……。いや、そうだ、闇鬼を持っていた…！』
亜莉亜の返事に、喜助の目が一瞬見開かれた。
冬「おい、ちょっと待てよ。…尸魂界に着いたときから斬魄刀を持っていたなんて事はありえない。──ということは、それ以前に何かあったってことか？」
喜「そうっすよ。…アタシの予想ではですけどね。」
『私の記憶に、解決の糸口があるのか……』
せめて何か思い出すことができれば…
そう思い、記憶の中に思考を巡らす亜莉亜だが…
『……』
…何も無い。
いくら探ってみても、最も古い記憶は”見知らぬ森にいた”こと。
だが、必ず何かある。
もっともっと奥深くに。
隠された、私の記憶が──
喜「何か思い出せそう、ですか？」
『喜助、悪いがこの話はまた今度にしてくれ。一人でゆっくり考えたいんだ。心の整理がしたい。』
亜莉亜のその唐突な言葉に、喜助は一瞬言葉につまるが、すぐにいつもの表情に戻る。
喜「分かりました。亜莉亜サンがそうおっしゃるなら、また今度にしましょう。──さて、次は」
冬「叉夜の話、だろ？」
喜「先に言われちゃいましたね…。もしかして、あの子の事気になってたんスか？」
冬「なっ…そんなんじゃ」
乱「あーっ！！もしかして日番谷隊長、年下好み…」
恋「マジかよ…」
ル「こら、恋次。日番谷隊長の事だ。そっとして…」
冬「ちげえっつってんだろが！！ただ、俺は…」
『叉夜の霊圧が気にかかってるんだ。そうだろ。』
龍「隊長、ナイスフォロー」
華「あ、四席……駄目ですよ、茶化しちゃ。」
弓「それで、その”叉夜ちゃん”って誰？美しいの？ま、神影隊長よりは劣ると思うけど。」
一角「知るか！！」
冬「話をそらすんじゃねえっ！！」
乱「そうよ！！日番谷隊長は、叉夜ちゃんのことが気になって仕方ないの！」
冬「だから…」
俺はシスコンじゃねえ、だ、僕は美しい、だ…
死神たちのテンションは落ち着くことを知らない。
喜「あらら…一気に賑やかになっちゃいましたねぇ。」
夜「何だか懐かしく思えるのぉ…最近は皆、険しい顔ばかりしておった。」
喜「虚退治に現世のパトロール…言葉で表すのは簡単ですが、実際はかなり労力を使いますしね。」
喜助と夜一は、穏やかな表情で死神たちを見守っている。
だが、いつまでも騒いでいてはらちがあかない。