零番隊…いや、瀞霊廷一のぶりっ子、吉沢湖娘が、零番隊副隊長である我妻拓斗に告白をしてから、しばらく経ったある日。
瀞霊廷の死神たちの間には、妙な空気が漂っていた。
というのも、瀞霊廷中に”ある噂”が広まっているのだ。
「ねぇ、聞いた？”あの噂”」
「え？”あれ”の事？」
「そうそう。”我妻副隊長が、吉沢湖娘に暴力ふるった”ってやつ。」
「聞いた聞いた。相手が相手だとはいっても、副隊長も酷い事するよね。」
道端で女子隊員たちが話している。
「でも、あの我妻副隊長が本当にそんなことするのかなぁ。」
一人が控えめに呟く。
「んー…私も、最初は吉沢湖娘の嘘だろうと思ってたんだけどさぁ…ねぇ。」
「私、見ちゃったんだ。…副隊長が吉沢湖娘に暴力振るってるとこ。」
「そうそう。それに、毎日吉沢湖娘を殴ったり蹴ったりしてるらしいし……あ、ほら、見てみなよ。」
一人が指差すそこには、取り巻きの男性隊員たちを連れて歩く湖娘の姿が。
「うわ…痛そう…」
「え、顔も…」
湖娘は、全身に痣をつけている。
日ごろ、湖娘に好意を持っている女子隊員は少ないが、このような状態だと、流石に被害者の味方をしてしまうものである。
真実が何かは知らないのにも関わらず。

そのころ、噂の我妻副隊長は、零番隊の執務室にいた。
拓「全くさぁ…してくれちゃったよね。」
杏「吉沢は、これからどうする気なんでしょうか…。」
魅「ねぇ、いい加減に、切り殺しちゃえばいいだけじゃないの？」
うじうじしてるのは一番嫌いなの。と魅月が口を挟む。
怜「魅月、無茶を言うな。切り殺すのが一番簡単だが、もし本当にそうしてしまえば、おそらく零番隊は解散だ。」
拓「俺の信用は皆無になっちゃったし、手の打ちようが無いよ。それに、恐らく吉沢の狙いは、どうせ、俺と亜莉亜を零番隊から追い払って、自分が最強の隊の隊長になることとかでしょ？」
杏「そんな…。」
拓「亜莉亜が帰ってくるまでに、決着つけられたら良いんだけどね…」
コンコン…
江「入りますわよ」
そ「失礼しまーす」
珍しく、江恋とそらの二人が、席官用の執務室に入ってきた。
江「…あの噂、どうにかなりませんの？」
そ「隊長も副隊長も吉沢に酷い事してるって噂。」