爽やかな朝日が辺りを包むころ、喜助は亜莉亜の部屋に向かった。
喜「亜莉亜サン、起きてます？」
『──あぁ。』
小さくも、ハッキリとした声が返ってくる。
まだ亜莉亜が寝ていることを期待していた喜助は、少し残念そうな顔をする。
スーッ
突然目の前のふすまが開き、喜助は少し慌てながらも、いつもの表情に顔を戻す。
喜「やっぱり早いっすね！流石、零番隊隊長サン。」
『そうか？普通だと思うぞ。』
喜「普通じゃないっすよ。ほら、後ろ見てみてください。」
亜莉亜の視界に、未だ夢の中にいる華恋の姿が映る。
『あいつは仕方ないだろう。こっちに来てからもずっと、修行ばっかりやってるんだ。』
そう、華恋は現世に来てからも、亜莉亜の足手まといにならないためと、鍛錬を怠らないでいるのだ。
卍解習得とまではいけずにいるが、入隊したころと比べてみれば、その実力の差は一目瞭然。
これも、華恋の真面目な性格のおかげだろう。
『もう少し、寝かせといてやるか。』
喜「そうっすね。朝ごはんは、華恋サンが起きてから温めれば大丈夫でしょうし。」
『じゃ、着替えてから行くから、先に行っといてくれ。』
未だ着流し一枚の亜莉亜。
さすがに、このまま皆の前に出るわけにはいかない。
喜「分かりました。じゃ、先に朝ごはんの用意して待ってます。」
亜莉亜は一旦部屋に戻り、現世用の服に着替えてから廊下に出た。
２・３歩進むと、意外な人物に出会う。
『新炉──意外と早いんだな。』
新「た、隊長。お早うございます。」
『それだけ、席官になりたいってことか？』
新「別に…そういう訳では…」
新炉は言葉を濁す。
『まぁいい。何の目的かは知らないが、せいぜい頑張ってくれ』
曖昧な態度の新炉に気分を害され、亜莉亜は、少し冷たい声を新炉に投げかけ、そのまま通り過ぎていった。
新「……」
新炉は、後ろ手に隠し持つ脇差に力を込める。