『ま、とりあえず出来る事からするしかないよな。』
自分を納得させるかのように呟き、亜莉亜はまた、町内に異常がないか確認しようと歩き出した。
しばらく歩き、景色がずいぶんと変わる。
『空須川…か。』
目の前の川は、その存在を隠そうとしているかのように、静かに流れている。
『？』
何か声が聞こえたような気がして、草むらに目をこらしてみる。
そこには、小さな影があった。
？「…うっ…ひくっ…」
近寄ってみれば、２、３歳程の子供が、橋の下に座り込み、泣いている。
なるべく現世のことには関わりたくないが──
『こんなところで、どうしたんだ？』
泣きじゃくる女の子を放っておくことができず、仕方なく亜莉亜は、なるべく優しい声で話しかけた。
子「ママとはぐれちゃったの。」
『そうか、仕方ない。送ってやるから、どこに住んでるか教えてくれないか？』
子「わかんない。」
『……そうか』
それもそのはず。
話している相手は小さな子供だ。
『…じゃ、いつ、どこではぐれたか、分かっていることを全て教えてくれないか？』
子「あのね、ずっとまえ、くるまにのってたらね、ドカンっておとがして、めがさめたらママとたってて、いつのまにか一人でいたの。」
その言葉に、眉をひそめる亜莉亜。
『ちょっといいか？』
子供の肩を支え、自分の前に立たせる。
その胸のあたりを確認する。
だが、亜莉亜の予想に反し、魂魄ではなく生身の人間のようだった。
子「……」
子供は、不安げな目で亜莉亜を見つめている。
『はぐれたのは、今日じゃないんだな？』
子「うん。」
『…（話を聞いている限りでは、魂魄の可能性が高いが、れっきとした生身の人間…何かある気がする。）…よし。名前、教えてくれるか？」