拓「どういう意味かな。」
拓斗の声にはとげがあるが、湖娘は拓斗の感情の変化に一切気づかない。
湖「私、本当に隊長に苛められてるんですっ…私は…私は、副隊長に幸せになってほしいけどぉ…ひっく…」
ここぞとばかりに、湖娘は瞳に涙を浮かべる。
湖「副隊長が、あんな女に騙されてるなんて…どうしても許せなくてっ…ひっく…」
拓「……それで？」
湖「！…だからっ…あんな酷い女には関わらないで、私を選んで、ほしくって…っ！？」
ヒュッ
拓斗は無言で、斬魄刀の先を湖娘の首に向ける。
拓「それで？ 」
湖「副…隊長っ…」
湖娘の声は震えている。
最初はまだ、いつもの笑みを顔に貼り付けていた拓斗だったが、今は違う。
ポタリ…
ついに湖娘の首から、一筋の赤い雫が滴り落ちた。
拓「君、度胸あるよね。」
そう言う拓斗の声は、湖娘には、いつもよりも数倍低いように感じられた。
拓「俺の前で亜莉亜を侮辱するとかさ。」
湖「副隊長っ…やめ…」
拓「俺らの信頼関係、甘く見ないでくれる？伊達に長年一緒にいるわけじゃないからさぁ」
湖娘はもう、ただひたすら頷くことしか出来ない。
そのとき、ゆっくりと拓斗の斬魄刀が地面に下ろされた。
湖「…っ？」
緊張が解けた湖娘は地面に膝から崩れ落ちた。
拓斗は自らの斬魄刀についた血を払うと、さっと鞘に収め、湖娘に背中を向ける。
拓「…ったく。こうだから新入りは嫌いなんだ。」
そう言葉を残し、拓斗は隊舎に帰っていった。
残された湖娘は地面に座り込んだまま、拓斗がいた場所をただ見つめることしかできなかった。
その瞳には、拓斗への絶望が渦巻いている。


破れた想いは憎しみに変わる
それは零番隊崩壊への道筋となるのか