亜莉亜の中で、何かが壊れた。
『拓斗、私はいいから！それ以上、何も言うな、言わないで、くれ──！』
半泣きに近い声で叫ぶ。
拓斗の体が、ビクリと揺れた。
あぁ。
感情が溢れ出す。
もういいや、この気持ちに身を任せてしまえ。
『霊王──やはり、やつの言っていたことは正しかったんだな。お前たちは鬼だ。私は決して貴様らを許さない。私たちを弄ぶ貴様らを、絶対に許しはしない。覚悟しろ。大人しく捕まってはやらない。』
亜莉亜は力の入らない身体を引きずりながらも、斬魄刀を握った。
憎しみで染まった青い瞳。
そこに、過去にあった輝きは無い。
王「好きにしたらいい。しかし、今のお前に何が出来る？」
『さぁな。だが、霊王、貴様をこの手で刻むくらいは容易い』
王「ほう、ならば訊ねよう。」
『…』
王「貴公が我らに攻撃をすれば、貴公の周りにいる死神全てが処刑されるとしても、その決意は鈍らぬか。」
『なっ……！』
亜莉亜の瞳が大きく揺らぐ。
王「まあ良い。護廷十三隊に属する全死神、そして、王属特務の全死神に命令する。"反逆者、神影亜莉亜を捕らえよ。抵抗するようであれば、殺しても構わない。"」
霊王からの直接の命令に、死神たちは逆らえず、苦渋の表情を浮かべながらも一人、また一人と斬魄刀を手に取る。
『くそっ…』
霊王は絶対に許せない。
しかし、仲間の命は──何物にも、代えがたい。
たとえ、我が命と比べようとも。
仕方ない、私も、潮時だ。
亜莉亜がそう判断しかけたとき、拓斗が立ち上がり、亜莉亜の前に出た。
『拓斗？』
拓「ここは、俺が食い止めるよ。」
亜莉亜に背を向けたまま、拓斗は呟いた。
『お前……』
亜莉亜は不安げな表情を浮かべる。
拓「どうにか食い止めるから、亜莉亜は逃げて。それで、ちゃんと生きて。」
『そんな！』
亜莉亜の目が大きく見開かれた。