止まって見えるほどゆっくりと下ろされた駕籠。
それにかかる布が静かにめくられ、中から一人の人物が現れた。
顔こそは見えないものの、亜莉亜にはそれが誰か一瞬で判別できた。
『霊王──！？なぜ、このような場所へ』
亜莉亜の声に、死神たちがざわつく。
王「神影亜莉亜、此度の働き、実にご苦労だった。」
亜莉亜の問いには答えず、霊王は言った。
高貴で、重厚で、威厳の満ちたその声に、辺りの空気が一層張りつめる。
『有り難き御言葉──』
頭を下げたまま亜莉亜は答える。
王「本日我らがここまで出向いた訳は、他でもない。貴公らに、実に残念な知らせがある。」
『──そ、れは』
亜莉亜は、ぎゅっと拳を握りしめる。
予想が外れることを願いながら。
しかし、霊王の言葉は非情で冷酷なものだった。
王「神影亜莉亜、貴公の処刑が決定した。」
『…』
辺りは騒然とする。
そして、静寂。無音。
冷静な亜莉亜の頬を、冷たい雫が滑り落ちた。
あぁ、雨か。
死刑を宣告された身でありながらも、そんな呑気な事を思っている。
どうして？いや、どうしようもない。
そうか、仕方ない。
まるで他人事かのように現実味がない。
人の感情ってものは、上手く作られているらしい。
もしこれが諦めだとしても、もうどうでもいい。
早く消え去ってしまいたい。
考えることをやめてしまいたい。
この戸惑いから、この苦しみから、一秒でも早く逃げ出したい。
拓「待ってください。霊王、それはどういった意味でしょうか。亜莉亜が一体何をしたと！」
何も言わない亜莉亜の代わりに、真剣な声で拓斗が抗議する。
しかし、亜莉亜自身がそれを止めた。
『いい、拓斗……』
か細くて頼りない、絞り出した声しか出なかった。
拓「それは聞けない。」
亜莉亜の言葉を、拓斗はバッサリと切り捨てる。
拓「霊王！お答えください！」
悲痛な声で拓斗は叫ぶ。