砂埃が舞う中、亜莉亜は瓦礫の中で動けずにいた。
──馬鹿だな、私は。
油断した。
いや、油断していた。
奴相手に、まともな戦術すら練っていなかった。
このままでは、約束一つ護れない。
大切な人一人護れない。
それで良いのか、私は？
『…ッ』
私が落ちてきたことに驚いてか、流魂街の住民たちが騒いでいる。
その中に、よく知った声を聞いた気がした。
そうだ、菫ばあちゃん。
私が奴を倒さなければ、非力な彼女らに為すすべは無い。
立ち上がらなくちゃ。
護りたいものが私にはある。
私が護るんだ。
王属特務零番隊隊長の名にかけて──
悲鳴をあげる体を無理矢理起こす。
瓦礫が、ガラガラと音を立てて私から滑り落ちた。
『負けてたまるか』
小さな声で呟き、よろよろと立ち上がった私に、辺りの視線が集中する。
その時だった。
菫「亜莉亜ちゃんだね？やっぱり！！ま、何て傷……」
亜莉亜の目に、こちらに走り寄る菫の姿が映った。
『菫、ばあちゃん…』
まさか本当に近くにいたとは…。
菫のあとに、自分が可愛がっていた子供たちも続く。
「姉ちゃん！」
「亜莉亜姉ちゃんっ…」
『お前らまで……』
亜莉亜は眉をひそめた。
菫「亜莉亜ちゃんをこんな目に合わせたのは、一体何処の誰なんだい！？」
珍しく怒りのこもった瞳で菫は問う。
『…れ。』
目を伏せながら亜莉亜は言った。
菫「？」
『逃げてくれッ！！
叫ぶ。
確かに感じる、あの攻撃的な霊圧。
こちらに近づいてきている。
『奴が……！』
必死に菫たちに伝えようとするが──時、既に遅し。
亜莉亜たちから数メートルほど離れた場所に、乃雅は現れた。
乃「…ったく、大人しく眠ってりゃ良いものを。」
鈍い光を放つ斬魄刀を担ぎ、乃雅はゆっくりと進む。
菫「これ以上亜莉亜ちゃんに手出しはさせないよ！」
『ばあちゃん！？』
両手を広げ、自分を護ろうとしている小さな背中に驚く。