「よっと」
小さな掛け声と共に、穿界門から流魂街に降り立った一人の死神代行──黒崎一護は、目に映る奇妙な光景に絶句していた。
織「黒崎君？」
急に立ち止まった一護を不思議に思い、彼の背中から織姫が声をかける。
雨「黒崎！急に立ち止まったりして……ッ！？」
織姫の横をすり抜け、一護の横に並んだ雨竜もまた、辺りに広がる景色に息を飲んだ。
一「一体、何がどうなってやがるんだ。」
一護はぽつりと呟いた。
いつもであれば青空が広がっているはずの尸魂界の空。
しかし今、そこには薄いオレンジ色の膜が張っている。
奇妙なのはそれだけではない。
瀞霊廷の方にはさらに、薄い黒色の膜が張られているのだ。
流魂街も瀞霊廷も、それぞれの膜ですっぽりと覆われていた。
雨「この状況からすると、これは結界か？」
あごに手を添えながら、神妙な表情で雨竜は言った。
織「でも、なんだか、普通の結界とは違う気がするよ。」
茶「うむ。」
織姫の意見に茶渡が同意する。
雨「特殊な結界なんだろう。それと、恐らく、流魂街側に張られている結界は”周りからの攻撃を避ける”もので、瀞霊廷側に張られているものは”中で発生する霊圧や衝撃を外に漏らさないようにする”もの。」
一「それだけ、尸魂界は敵を警戒してるってことか。」
一護の表情が厳しくなる。
一「行こうぜ。亜莉亜たちが戦ってる。」
一護の言葉に、他の三人が頷く。
しかし次の瞬間、彼らの進路は、一人の死神によって遮られた。
「待て、黒崎一護。」
冷静で、感情を含まない落ち着いた声。
一護は、この声に聞き覚えがあった。
一「もしかして、お前、亜莉亜んとこの…」
怜「零番隊第五席、桜ノ宮怜だ。」
平然と名乗る。
しかし、一護たちは首をかしげている。