深夜、月明かりに照らされた零番隊隊舎に、数十名もの隊士たちが集められていた。
だが、隊士が召集されたのは零番隊だけではない。
護廷十三隊全体が召集されている。
集められた隊士たちは、各隊の隊長格を中心に、明日に向けての作戦を再確認していた。

『以上が、明日の対策についてだ。何か質問は？』
亜莉亜は、手元の資料から目をあげ、あたりを見回した。
まっすぐに亜莉亜を見ている隊士たち、不安と決意で複雑な表情をしている席官たち、そして、壁に寄りかかりそっぽを向いている拓斗。
そのとき、一人の手がパッとあがった。
龍「質問～！」
『何だ、龍。』
龍「結局さ、黒雷乃雅って何なの？」
龍の質問に、亜莉亜はハッとしたように目を丸めた。
『そういえば、奴についての説明がまだだったな。簡単に言えば、奴は元王属特務隊長かつ尸魂界の反逆者だ。奴に勝利した者は、誰一人として存在していない。』
亜莉亜の言葉に、隊士たちはゴクリと唾を飲んだ。
杏「だ、大丈夫！私たちは絶対に勝てる！なんせ、私たちは完全無欠な零番隊なんだからっ！！」
龍「そうだそうだ！この俺様に任せとけ！」
怖じ気づいた隊士たちを、席官たちが励ます。
彼らだって怖くないわけではないだろう。
しかし席官ともある彼らの動揺は、隊士たちの混乱に直結する。
だから彼らは、あくまでも余裕であるという態度をとるのだ。
『他に聞きたいことはあるか？──よし、これで、明日についての話は終わりだ。』
辺りの空気がフッと緩む。
だが、その場を動こうとする隊士は一人もいない。
亜莉亜は、その様子を見て、ぽつりぽつりと話し出した
『……お前たちを不安にさせる気はないが、正直なところ、無事に奴に勝てる自信は無い。』
隊士たちはハッとして、静かに目を伏せる。