『…っ！』
拓「気づいてないとでも思ってた？馬鹿だなぁ。何年一緒にいると思ってんの。」
満足そうな表情で亜莉亜を見下ろす拓斗。
『そうだな。隠し事なんて、はなから無駄だったんだな。心配させてすまなかった。』
拓「いいのいいの。亜莉亜を心配し、亜莉亜をサポートする。これが俺の仕事なんだから！……修業、安心して行っておいで。だけど、自分の体のことを第一に考えて。ね？」
『……結局は心配をかけてしまうな。じゃあ、後は頼んだ。』
拓「了解〜！」

拓斗と別れた亜莉亜は、すぐに昨日の滝の近くに行った。
そして、適当な場所に結界を張る。
結界の中心に座った亜莉亜は、闇鬼に意識を集中させ始めた。
『…（答えてくれ…闇鬼。）』

闇「──何の用だ。」
薄暗い森の中に、ぼんやりとした黒い影。
『闇鬼。制約、思い出したぞ。』
闇「それで？」
闇鬼の態度は素っ気ない。
『悪かった。』
亜莉亜は、闇鬼がいるであろう方向を真っ直ぐに見つめて言った。
闇「…」
返事はない。
だが、辺りの空気が微かに揺らいだ。
『私は、死んでもいいと、覚悟していた。自分を犠牲にすれば済むと思ってた。だけど、やっと気付いた。──そんなのじゃ、私の自己満足にしかならないんだ。』
闇「…」
『なぁ、闇鬼。私は生きる。生きるから、そのために、卍解を使わせてくれないか。頼む……！』
亜莉亜は、闇鬼に向かって頭を下げた。
闇「──主、顔を上げろ。」
亜莉亜が顔を上げると、いつのまにか闇鬼が亜莉亜の前でひざまずいていた。
『闇鬼！？』
闇「その言葉に、嘘偽りはないな？」
闇鬼は、顔を伏せたまま亜莉亜に尋ねる。
『…あぁ。』
闇「主が心からそう望むのであれば、我は全てを主に授けよう。」
闇鬼の黒々とした瞳が、亜莉亜の目をしっかりと捕らえた。