カンッ
コンッ…
木刀と木刀のぶつかり合う音が、修練場中にこだまする。亜莉亜は、隊員たちの動きを見て回った。
『おい、怯むな！どんどん前に出ろ！』
「はいっ！」
後退してばかりの隊員に活を入れる。
どいつもこいつも基礎がなってないな。
やはり、内容を基本的な打ち合いにして良かった。
そう思いながら、他の隊員たちにも目をやる。
ふと、銀髪の少女と金髪の少年に目が留まった。
激しく打ち合う二人の間には、一瞬の隙もない。
その様子を見ていると、自然と胸が温かくなった。
一年前の頼りない面影はどこにもない。
成長、したんだな。
今や二人の顔つきは、立派な零番隊隊員だ。
もうあいつらの時代は来ているのかもしれないと、思わずにはいられなかった。

『拓斗。』
一通り隊員たちの打ち合いをチェックした亜莉亜は、拓斗の近くに歩み寄った。
拓「ん？どうかした？」
他の隊員たちを指導していた拓斗が、笑顔で振り向く。
『ちょっと出てくる。その間、宜しく。』
拓「え？何処に行くかくらい、教えて──」
『昨日の滝だ。知ってるくせに。』
冷たい視線を拓斗に向ける亜莉亜。
拓「あ、え！──やだなぁ、気付いてたんだ。」
一瞬目を見開いた拓斗は、冗談めかして笑う。
『それはこっちの台詞だ。覗き見なんて趣味が悪いぞ』
拓「ごめんごめん！いや、あの、亜莉亜が綺麗すぎて、あまりにも絵になってたからさぁ。声かけずらくて。」
『適当なことを言うな』
僅かに頬を染めながら、亜莉亜は言った。
拓「うん、良かった。」
拓斗は静かに言った。
『？』
拓「亜莉亜の顔が明るくなってる。」
優しげな笑みを浮かべ、目を細める拓斗。
拓「最近、何か元気なかったし、昨日だって思い詰めた顔してたから、心配してたんだよ。」