杏「はい、大丈夫ですよ。場所は、零番隊の修練場でいいんですよね。」
私は頷いた。
『じゃ、修練場で待ってる。』
私は、杏樹と別れて、真っ直ぐ修練場へと向かった。

キィィ…
錆び付いたドアが、悲鳴をあげながら開く。
零番隊の修練場は隊舎の地下に作ってあるため、それほど明るくはない。
あまり気持ちのよい場所ではないことは確かだが、零番隊隊員たちの霊圧に耐えられるようにするためには、地下に作るしか方法がなかったのだ。
シュッ…
ふと背後に誰かの気配を感じた。
この霊圧、言うまでもなく拓斗だ。
拓「亜莉亜、聞いたよ。今日からずっと修業なんでしょ？」
『まあな。奴が単独で攻めてくるとは考えにくい。恐らく、大量の虚を連れてくる。その場合、こちらの戦力の鍵となるのは──』
拓「零番隊、だもんね。」
『あぁ。』
拓「…」
『…』
拓「昨日、浦原と会ってたんでしょ？何話したの？」
拓斗は、亜莉亜の表情を伺いながら言った。
『奴らのことについて、だ。』
私は、新しく分かったことと、喜助の推測についてだけを話した。
もちろん、死ぬ気でいたことは言わない。
だって、また心配をかけてしまうから。
拓「そっか。確かに、その線で考えるのが妥当だね。……亜莉亜、気を付けて。俺、亜莉亜に何かあったら」
切なげな声で拓斗は言うが──
『心配するな。私より、自分のことを心配しろ。お前も十分危険なんだからな。』
亜莉亜はそう言い残し、拓斗のそばから離れていった。

しばらくすると、零番隊の隊員のほとんどが、修練場に集まった。
『今日からは、全員修行に集中してもらう。今回の戦いで勝てるかどうかは、零番隊の力にかかってる。心して鍛練に励んでくれ。以上だ。』
私が指示を出すと、すぐに隊員たちは動き出した。
零番隊の修業形式に乗っ取り、ランダムでペアを作り、打ち合いを始める隊員たち。