一「何だぁ？道場破りか？珍しいな！」
意気揚々と、一角は拓斗の元に歩み寄った。
拓「修業かな」
落ち着いた声で答える拓斗。
一「そうか。なら、俺が相手してやるよ。一対一で勝負だ！」
一角は、木刀を肩に担いだ。
拓「いいや──」
静かに首を振る拓斗に、一角は嫌悪感を露にする。
一「俺じゃ不満ってか？」
拓「そうじゃないけど、足りない。」
一「！？」
拓「俺を誰だと思ってるの？ここにいる全員でかかってきてくれるかな？もちろん、席官も含めて、ね。」
一「チッ……！後悔すんなよ。」
仕方ないというように、一角は隊員たちに声をかけ、木刀を構えさせた。
弓「こんな大人数で一人に剣を向けるなんて、美しくないね。」
拓「さぁ、どうかな？始めよう。一角、合図。」
一「本気でやるからな？──始め！」
開始の合図共に、十一番隊隊員たちが一斉に拓斗を囲む。
そして、次から次へと拓斗に木刀を向けるが……
拓「甘いね」
拓斗は一人の木刀をフワッと避けると、大きく木刀を振った。
「「「うわぁっ！！」」」
その一撃だけで、数十人もの隊員が吹き飛ばされた。
一「相変わらず、何て威力だ。」
弓「本気みたいだね。」
一「俺らもいくぜ、弓親ぁぁ！！」
一角は、倒れた隊員たちの中央にいる拓斗に向かって走り出した。
その後ろには、弓親も控えている。
一「おらおら……あ？」
一角は力の限りに木刀を振ったが、拓斗にスルリとかわされてしまった。
弓「油断は禁物だよ。」
ビュッ！
空気を引き裂く鋭い音と共に、一角に隠れていた弓親が真一文字に木刀を振るう。
その一撃は、拓斗にダメージを与えたかのように見えたが。
カァン！
ヒュッ…
刹那、拓斗に握られた木刀は、弓親の鼻先につきつけられていた。
拓「うーん……やっぱり鈍っちゃったかな。こんだけの相手で15秒もかかっちゃった。前なら余裕で5秒切ったはず。」