闇鬼を素早く鞘から抜くと、鞘のみを濡れない場所に移し、私は滝に向かって、霊圧を出さずに斬り込んだ。
滝の規模がそこまで大きくないこともあり、水は膝上くらいまでしかなかった。
パシャァッ
様々な大きさの雫が、私の回りに飛び散った。
その後も、私は何度も滝を斬った。
髪の毛や死覇装が濡れていく中、私はずっと、記憶に想いを馳せていた。

拓斗は、急に姿を消した亜莉亜を追って、流魂街を歩き回っていた。
いつもだったら、亜莉亜の霊圧を探すことは、そう難しくないことなのに、何故か今日は。
拓「はぁ。一体何やってるんだろう。」
こんなときに、一人で流魂街に出ていってしまうとは。
心配しても、しつくせない。
とにかく、いそうな場所を徹底的に見てみるしかないか。
そう思い、拓斗は近くの森に足を進めた。
パシャッ
バシャ…
水飛沫の音が聞こえる。
拓「滝の音、だけじゃない」
拓斗はそっと足を進めた。
木々の間を抜けると、拓斗は目を細めた。
拓「亜莉亜…」
そう、自分の探していたその人が、滝のふもとで刀を振り回していた。
拓斗は反射的に、木の影に隠れた。
何故ここに？
何故あんなことを？
拓斗はそうっと亜莉亜を盗み見た。
亜莉亜は、びしょ濡れになりながらも、一心不乱に刀を振るっている。
その表情は、どこか儚くて、どこか切なげで、どこか泣きそうだった。
ねえ、亜莉亜。
どうしてそんな顔してるの？
俺に全部話して。
俺は全部受け止めるから。
君をちゃんと支えるから…
拓「！」
ふと、亜莉亜の頬を一つの雫が滑り落ちた、そんな気がした。
単なる水かもしれないということは分かっていたが、拓斗には、その雫が涙であるように思えてならなかった。