『…悪かった。』
私は静かに言った。
どうしても耐えられなかった。
あの使用人の言葉。
私を励まそうとしてくれているのは分かっているのだが。
……そんなわけないだろう、私はあいつに勝てない。
黒雷乃雅には勝てないんだ。
今のままでは、絶対に。
拓「分かってるよ。亜莉亜の気持ち。俺も一緒だから。」
『え…』
拓「もっと、もっと強くならなきゃ、亜莉亜を護れない。今は俺、正直亜莉亜の足手まといでしかないし。」
『そんなこと！』
私は、拓斗の言葉を否定しようと声をあげる。
拓「いいの。事実なんだから。それよりも、亜莉亜の話が聞きたい。」
私は目を伏せた。
拓「力を抑えてるって、どういうこと？」
拓斗の真剣な瞳が、私の目を捉えた。
逃げようがなくて、仕方なく口を開く。
『──私は長年、闇鬼と修行をして、しっかりと向き合ってきた。知ってるよな』
拓斗から目を逸らし、真っ青な空を見た。
拓「そりゃ、ずっと小さい頃から一緒にいたからね。」
拓斗はさも当然であるというように答えた。
『じゃあ、これは？』
私は一旦、言葉を止める。
拓「？」
『私は、卍解ができない。』
拓「！？──本当に？」
拓斗は、信じられないとでもいうように、目を見開いた。
『あぁ。だが、修得できていない訳ではないんだ。』
拓「──と言うと」
『斬魄刀の具象化だって、斬魄刀の屈伏だって、随分前に達成してるんだ。しかし、今まで一度も卍解が成功したことはない。』
拓「どうして」
『私だって、そう思って何度も闇鬼に聞いてみた。だが奴は、いつもこう答える。"時がくれば教えよう"と。私は納得できなかった。だから、自分なりに考えてみたんだ。』
拓「……」