使「これはこれは、神影様。おはようございます！」
居間につくと、なぜか使用人の一人に声をかけられた。
『あ、あぁ。』
若干気圧されながらも、拓斗に促され、席につく。
やっぱり、慣れない空間だと落ち着かない。
しばらくすると、使用人が料理を運んできた。
使「失礼いたします」
私は、きびきびと動く使用人たちを、ぼうっと見ていた。
使「神影様、昨夜はお疲れ様でございました。」
私の近くで食事の準備をしていた使用人がふと話だし、私はハッと目を上げた。
使「神影様と拓斗様の絆が目に見えるようで、嬉しく思ってしまいます」
使用人は微笑む。
使「私どもに言えたことではないのかもしれまれんが、流石は零番隊隊長と。」
『…ありがとう。』
一応は誉められているので、礼儀としてお礼の言葉を言っておく。
だが、私の心は曇ったままだった。
使「気に病まれることはありませんよ」
私の表情がよほど暗かったのか、その使用人は元気付けるように話を続ける。
『……』
使「次は必ずや勝ちますとも。元気をお出しください。何も恥じることは…」
私は、使用人の言葉に耐えられず、突然席を立った。
使「神影様？どうかなさいました」
『すまない』
その一言だけを残し、私は皆のいる居間を飛び出した。

ドサッ…
私は、屋敷の屋根に登ると、仰向けに倒れ込んだ。
ここなら、追ってこれる奴はいない。
只１人以外はな。
シュッ…
拓「みーつけた！」
突然現れた拓斗が、私の顔を覗きこむ。
拓「隣、いい？」
私は無言で頷いた。
拓斗は、私の隣に静かに腰を下ろす。
二人の間を、沈黙を和らげるような、柔らかな風が通る。